霧幻鉄道 只見線を300日撮る男の映画専門家レビュー一覧

霧幻鉄道 只見線を300日撮る男

    2011年7月の新潟・福島豪雨で甚大な被害を受けた、福島県会津若松市と新潟県魚沼市を結ぶJR只見線の魅力を発信する郷土写真家・星賢孝を追いかけたドキュメンタリー。一時は廃線の危機に瀕した同線と奥会津の復活に向け尽力する星と地域住民の思いを撮る。長らく不通になっていた会津川口駅~只見駅間は復旧工事が行われ、2022年10月1日に全線運転再開する。本作は星賢孝ら有志が企画、東日本大震災後に会津に映画製作の拠点を移し、2017年度日本映画復興奨励賞を受賞した「『知事抹殺』の真実」などを手がけてきた安孫子亘監督がメガホンを取った。俳優の山本東がナレーションを担当。
    • 映画・音楽ジャーナリスト

      宇野維正

      天災がもたらした被害の実態と、復興までの諸問題と道程。日本のような災害大国において同種のテーマを扱ったドキュメンタリー作品が量産されるのは必然だが、本作はJR只見線という対象への焦点の絞り方と、郷土写真家の視点(主観)と解説(客観)のバランスが良好。地元の足として保全の必要性が語られがちなローカル線の観光資源としてのポテンシャル。そこに疫病や気候変動といったイシューも重なるのだが、安易に同情や共感を誘うことなく、余白は余白として残されている。

    • 映画評論家

      北川れい子

      集中豪雨で鉄橋が崩落した人気ローカル線・只見線と、その只見線を数十年にわたって撮り続けた郷土写真家・星賢孝。このドキュメンタリーは、彼の写真や現在に至る実績等を、当人への取材をたっぷり盛り込みながら具体的に語っていくのだが、星賢孝が在っての只見線、的なイメージがしなくもなく、いささか腑に落ちない。むろん只見線とその周辺の景観に対する損得抜きの愛には敬服するが、意地悪く言えば只見線を私物化しているような。ともあれこの10月の全線運転再開、万歳!

    • 映画文筆系フリーライター。退役映写技師

      千浦僚

      稀有な風物、それをずっと見てきた人物の凄み。只見線というものが単に交通手段であるとか、単に風景であることを超えて物神化しているが(無人の列車のために無数の灯をともし、無人と知っても手を振ったというくだり)、たしかにそこまでいったものが存在する、それを取り巻く人々がいる、ということをこのように見せられると私も、また、本作を観る者は、そこに接近する、その人々の列に加わりそうになるのではないか。正直、本作を観て奥会津に行ってみたいと思っている。

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