ストーリー・オブ・マイ・ワイフの映画専門家レビュー一覧

ストーリー・オブ・マイ・ワイフ

「心と体と」のイルディゴー・エニェディによる1920年代のマルタ共和国を舞台にした恋愛映画。カフェに最初に入ってきた女性と結婚するという賭けをしたヤコブは、初対面のリジーに求婚する。週末に結婚の儀式を行い、幸せなひと時を過ごしていたが……。出演は、「アデル、ブルーは熱い色」のレア・セドゥ、「マイ・フーリッシュ・ハート」のハイス・ナバ―、「グッバイ・ゴダール!」のルイ・ガレル。第74回カンヌ国際映画祭コンペティション部門出品。
  • 米文学・文化研究

    冨塚亮平

    妻の複雑な人間性と向き合えない夫の有害な男性性に焦点を当てることで、従来のファム・ファタールものとは異なる男女の関係性を描こうとしたと思しき試みは、ちょっとした目線の外し方や些細な仕草だけで男心をこれでもかとばかりに翻弄するレア・セドゥが、あまりにも完璧に夫を狂わせるファム・ファタールを体現してしまっているがゆえに、かえって失敗しているように思える。丸坊主でも笑ってしまうぐらいにイケメンのルイ・ガレルは、若く知的な間男として見事なハマりぶり。

  • 日本未公開映画上映・配給団体Gucchi's Free School主宰

    降矢聡

    男を翻弄する役どころを演じたレア・セドゥの魅力に、良し悪しの大半がかかっているような作品だ。従来ならファム・ファタールと呼ばれていたであろうその役は、監督自らファム・ファタールの物語ではないと明言している通り、自覚的に現実的な一人の女性として描かれているだろう。しかし、女の現実的な側面を直視することなく、ミステリアスな謎を幻視する男は、女の不確かさに勝手に苦悩する。こうした本作の皮肉な構造は、映画における男女のロマンスの鋭い批評にもなっている。

  • 文筆業

    八幡橙

    運命か偶然か。奇妙な出会いによって結ばれた妻への?き消せぬ不安と疑念を、印象派の絵画を思わせる美しい映像と共にイルディコー・エニェディが繊細に映し出す。愛とは、夫婦とは、仕事と私生活の境とは――。1920年代から今も変わらぬ普遍の命題がリアルに響く。一方で監督が腐心したという、レア・セドゥ演じる妻をファム・ファタールとして描くまいという尽力が結果最後まで芯を?みにくいモヤモヤを生んだきらいも。波光満ちる海上をたゆたう、長尺ゆえの心地よさが魅力。

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