復讐は私にまかせての映画専門家レビュー一覧

復讐は私にまかせて

スタントマン無しの壮絶な肉弾アクションに目を奪われる、第74回ロカルノ国際映画祭金豹賞を受賞したインドネシア発のラブ&バイオレンス。勃起不全に悩むケンカ野郎アジョと伝統武術シラットの達人イトゥンは、互角のファイトの果てに恋に落ちるが……。アジョのトラウマとなった“ある秘密”をめぐり、後半は怒涛の復讐劇が展開する。監督は国内外で多くの受賞歴を誇るインドネシア映画の俊英エドウィン。撮影は日本の名手・芦澤明子が務め、コダックの16mmフィルムで撮影された映像は、鮮烈な色彩、豊かな陰影、ざらついた質感が、不器用でアザだらけの恋と暴力の禍々しさを際立たせ、愛と復讐のドラマを魅惑的にきらめかせている。
  • 米文学・文化研究

    冨塚亮平

    主人公カップルが出会う格闘場面は、突然ギアが入る唐突さといい、殺陣のスピード感、トラックやロケーションを生かした飛びつきや落下のアクションを捉える撮影といい最高。アジョの紫のジャンパー、イトゥンのヘアバンドやラジオから流れる現地の懐メロなど、細部もことごとく魅力的で前半は大いに楽しめたが、アジョのEDという設定を「デス・プルーフ」的な女から男への復讐劇と「有害な男性性」批判へと露骨に回収しようとする、あらゆる暴力に理由を用意する姿勢には乗れず。

  • 日本未公開映画上映・配給団体Gucchi's Free School主宰

    降矢聡

    タランティーノ作品や70年代日本のプログラムピクチャー作品などを想起させ、監督自身の映画愛を突き詰めたような画面とストーリーはとても楽しい。ただメインの男女が各々抱える性的なトラウマが、ユーモラスかつシリアスに描かれるのだが、良く言えばバランスよく、悪く言えば中途半端なこの映画の態度にいまいち乗り切れなかった。なにより問題なのは、一番の強敵と一番最初に戦ってしまって、あとは雑魚ばかりという点。もっともっと破天荒に突き抜けたものが見たかった。

  • 文筆業

    八幡橙

    今号で丸一年、当欄担当開始以来の問題作では?前情報からシラットの神技が炸裂する「ザ・レイド」級超人アクション+下世話な笑い満載の快作を期待したが、思いの外アクションの比率低めで消沈。結果、主人公メイン二人のどっち?男性主人公、弱すぎない?後半に登場するとある人物は、生きてるの死んでるの?……と、累々たる謎が残った。とはいえ、独特の音楽や芦澤明子撮影による16㎜の効果か、往年の香港や角川映画を彷彿とさせる郷愁含め、この雑味嫌いじゃない!

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