激怒(2021)の映画専門家レビュー一覧

激怒(2021)

映画評論家、アート・ディレクターとして様々に活躍する高橋ヨシキが企画し、オリジナル脚本で長編初監督に挑んだバイオレンス・エンターテインメント。激怒すると暴力が止まらない中年刑事の主人公・深間に「ローリング」「犯る男」の川瀬陽太が扮し、唯一無二のパワフルなダークヒーローを生み出した。共演は「横須賀奇譚」の小林竜樹、「SR サイタマノラッパー」シリーズの奥野瑛太。「ローリング」「あのこは貴族」の渡邊琢磨と、三島賞作家で音楽家の中原昌也がサウンドトラックを担当。重低音とオーケストレーションが交錯するユニークな音楽が脳髄を直撃する。
  • 映画・音楽ジャーナリスト

    宇野維正

    「異動辞令は音楽隊!」同様に「コンプライアンスの壁にぶつかる昔気質の刑事」モノだが、こちらの刑事はその壁を超えてとことん暴走していく。現代社会批判を込めた近未来SF的設定、突然挿入される海外での精神治療、唐突な背景のVFX、非現実的な照明の効果など、ストーリーの本筋以外でいちいちフックが効いていて退屈しないが、過激な暴力描写それ自体が目的化したクライマックスにはノレず。オープニングのグラフィックや全篇にわたる音楽に顕著な頭抜けたセンスはさすが。

  • 映画評論家

    北川れい子

    本作の、リアリズムなどほとんど無視した過剰なキャラクターと、過剰な設定、過剰な暴力は、映画という嘘だから可能なキツいくすぐりで、バイオレンスアクションの定番でもある。がどうにも腑に落ちないのは、主人公の暴走刑事が、その暴走癖治療のために3年も海外の施設に送られ、あれこれ治療を受けるくだり。要は主人公が不在のその3年間に日本が変わったということを描くために、海外治療を使ったのだろうが、これはムリムリ。オープニングを含めスタイリッシュな映像には感心。

  • 映画文筆系フリーライター。退役映写技師

    千浦僚

    近年日常的に考えていたことがそのまま画になっていて、しっくり馴染んで全篇を観る。何も通らない横断歩道赤信号で律儀に待つ奴が増えたと思いません? そして、にもかかわらず、というか、だからこそ、なのか、善悪や倫理的な判断さえも自発性や当人の魂を欠く気持ち悪い同調圧力となって、結果、世の中が荒んでいる。あんまり舐めてるとその相手に殴られるよ。その暴力の緊張感なく増長する者の醜悪を憎む本作に同意する。脇でない、全体像の川瀬陽太氏の圧倒的な良さ! 必見!

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