掘る女 縄文人の落とし物の映画専門家レビュー一覧
掘る女 縄文人の落とし物
縄文遺跡の発掘調査に携わる女性たちを記録したドキュメンタリー。同じ現場に30年通い続ける調査員、求人チラシを見て応募した作業員、考古学に夢中の大学院生等々。男仕事と思われがちな遺跡発掘で、汗水流しながらスコップを地面に這わせる彼女たちの姿を追う。ナレーションを「銀河鉄道999」のメーテル役で知られる池田昌子が担当。監督は「氷の花火 山口小夜子」の松本貴子。
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脚本家、映画監督
井上淳一
まさかドキュメンタリーでこんなにワクワクするなんて。圧倒的な男性優位の考古学界で発掘調査に携わる女性たち。何十年も同じ場所を掘り続ける大竹さん。発掘した掘り棒を持ち、「縄文人を感じることができる」と笑う。その笑顔だけで彼女がなぜ考古学をやっているかが分かる。これぞ映画。壊さずに土器や土偶を掘り出せるか。それはもうサスペンス。30年掘った場所を埋めるラストに涙。でもそこで発掘されたものは遺り続ける。掘る女という題材選びが最高過ぎて。ただただ脱帽。
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日本経済新聞編集委員
古賀重樹
「≒草間彌生 わたし大好き」「氷の花火 山口小夜子」で世界的なパイオニアとなった日本女性の生き方を提示してみせた松本貴子監督の新作。縄文遺跡の発掘調査にかかわる女性たちを描いたこのドキュメンタリーでも、そのまなざしは一貫している。一見地味な分野ではあるが、はいつくばって土にまみれて手足を動かす彼女たちの身ぶりは十分に雄弁だし、そんな身ぶりに真摯に向き合う監督の姿勢を支持する。生き方とはこういう具体性なのだ。具体性こそが映画の武器なのだ。
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映画評論家
服部香穂里
同じ遺跡に携わり続けた30年間を含む、発掘調査一筋のベテラン考古学者から、後に国宝となる土偶を運よく掘り当てた当時の様子を、嬉々として語るおばちゃん二人組まで、魅力溢れる人選で、発掘現場の実態を多角的に捉えて飽きさせない。土や汗にまみれながら好きなことを仕事にできている充実感と、その何十倍もの時間が費やされる地道なデスクワークとのギャップにも、働くこと全般に共通する本質が窺え、ユニークな職種に対する好奇心に共感も加わり、見入ってしまった。
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