Blue Island 憂鬱之島の映画専門家レビュー一覧

Blue Island 憂鬱之島

「乱世備忘 僕らの雨傘運動」のチャン・ジーウン監督が、実在する三人の人物がそれぞれ文化大革命、六七暴動、天安門事件に遭遇し激動の歴史を乗り越えてきた記憶や、香港市民が自由を守るために闘う姿を、ドキュメンタリーとフィクションを組み合わせて記録する。「乱世備忘 僕らの雨傘運動」のプロデューサー、ピーター・ヤムや、「十年」の製作総指揮を務めたアンドリュー・チョイが参加。北米最大級のドキュメンタリー映画祭、Hot Docs カナディアン国際ドキュメンタリー映画祭2022にて最高賞を受賞。第13回台湾国際ドキュメンタリー映画祭審査員特別賞など三冠に輝いた。
  • 映画監督/脚本家

    いまおかしんじ

    年寄りも若者もみんな声高じゃないところが良かった。激昂したい気持ちを抑えて、我慢している人たちの無念が迫ってくる。本当は大変なんだろうと思う。香港のことをほとんど知らない。彼らが何を考え、何をしたいのか、考えさせられる。幾人かは捕まって、牢獄に入れられる。シビアだ。再現みたいに、当事者が芝居しているのが、微笑ましい。こういうフィクションが、実は必要なのかもしれない。ドキュメンタリーの生真面目さから少しでも遠ざかろうとしているみたいだ。

  • 文筆家/女優

    唾蓮みどり

    香港で起こった革命の静かな声。そしてかつての声。世代を超えて繋がっていく繋ぎ方に心動かされる。イメージシーンの多用が少し気になったが、ただ昔の映像を使ったら確かに割と典型的な映画になってしまったかもしれない。出演者の一人、チャン・ハックジーがビクトリア・ハーバーで泳ぐシーンが素晴らしい。都会のビル群が向こう側に見える海に飛び込むのは解放なのか。前作「乱世備忘」(16)のときも非常に興味深かった。今後も追っていきたい監督のひとりである。

  • 映画批評家、東京都立大助教

    須藤健太郎

    雨傘運動から逃亡犯条例改正反対運動にいたる、大規模な民主化デモの動き。本作はそんな現在の運動を、文化大革命、六七暴動、天安門事件などと関連させ、香港史の流れのなかで把握する。チャン・ジーウンは前作「乱世備忘」(16)で、雨傘運動を記録する自身の映像を父親が子どもたちを映したホームビデオと重ねてみせたが、今回は現在の若い活動家にかつての活動家の姿を再現ドラマとして演じさせる。このアプローチの是非をどう考えるべきか、私にはまだ判断がつかない。

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