NOPE ノープの映画専門家レビュー一覧

NOPE ノープ

「ゲット・アウト」「アス」のジョーダン・ピール監督が放つSFスリラー。田舎の広大な敷地で牧場を経営する一家の長男が、家業をサボり市街に繰り出す妹にウンザリしていると突然、空から異物が降り注ぐ。すぐに降り止むも直前まで会話をしていた父が息絶えて……。出演は「ゲット・アウト」のダニエル・カルーヤ、「ハスラーズ」のキキ・パーマー、「ミナリ」のスティーヴン・ユァン。
  • 映画評論家

    上島春彦

    映画は「馬と黒人」から始まったという主人公一家の宣言が実にいい。マイブリッジを起源としているわけだ。時空を超える雑多な挿話の積み重ねからじわじわと滲みだしてくるのは、かつて名子役だったアジア系青年の心に潜む「絶対的な他者に食べられたい」という不条理な欲望であり、それを主人公は理解していない。観客は理解する。手回しのアイマックス・カメラというガジェットも心憎く、映画小僧の琴線に触れるものがある。高額予算のおかげでM・ナイト・シャマラン映画みたい。

  • 映画執筆家

    児玉美月

    「her/世界でひとつの彼女」や「インターステラー」などで撮影監督を務めたホイテ・ヴァン・ホイテマのスペクタクルな映像美が、本作の壮大さを支えている。外に出ていくことによる恐怖、あるいはなにか巨大な力に吸い込まれてしまいそうになる漠然とした恐怖は、パンデミックに見舞われた「いま」を生きるわたしたちの心象に合致するものだろう。人種差別問題などもやはり引き継がれているが、ジョーダン・ピールの過去作である「ゲット・アウト」などと比較すると完成度は劣る。

  • 映画監督

    宮崎大祐

    一度それを見てしまったら最後、その後の人生の毎分毎秒がその瞬間をとらえるためだけに存在しているかのごとく日々が過ぎていく。さっきよりも光の具合が良いから次はもっと上手くとらえられるかもしれない。でもリテイクして予定調和になるとあいつさっと雲の中に隠れちゃうんだよな。犯している暴力にも気づかず、さまざまな人生と感情を飲み込みながらも刻一刻とそれは肥大していく。われわれはそんな存在を毎度理不尽に思いながらも今日もそれをとらえようと目をこらしている。

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