クラウディ・マウンテンの映画専門家レビュー一覧

クラウディ・マウンテン

中国ドラマ『鎮魂』のチュー・イーロンが映画初主演したディザスター・アクション。トンネル工事完了間際、トンネル内に突如大量の水が出る一方、街では地盤沈下が起きる。地殻変動に伴う土石流発生を防ぐため、地質学の専門家イージョウは山の爆破に向かう。超巨大地殻変動の危機に直面するイージョウに扮したチュー・イーロンは、ノースタントで垂直にそびえ立つ絶壁を登るアクションに挑んだ。共演は、「インビジブル・スパイ」のホァン・チーチョン、リドリー・スコット監督作「オデッセイ」のチェン・シューほか。
  • 映画評論家

    上島春彦

    中国が大作でこの手の映画を作るのは人民を洗脳するのが目的であり、海外市場向けじゃない。面白いので必見だが、従って評価は出来ない。そもそも少数民族の山岳地域に検査もちゃんとせず勝手にトンネルを掘り、そのせいで岩が割れて大洪水になると住民を強制避難させ「中国共産党はお前らを見捨てない」などと。どういう理屈なんだ。技術もないくせに高速鉄道など作るな、と私は言いたい。こういう時、少数民族は泣きわめくだけだから歌でも歌わせとけ、という含意にも腹が立つ。

  • 映画執筆家

    児玉美月

    ディザスター映画にとって肝心のスペクタクルパートはインパクトがない。回想や落下の描写の映像技法にも意匠を凝らす気がない。ドラマパートはベタでお決まりの展開しかない。役者それぞれの芝居も紋切り型のキャラクターを一般的な手法で演じているに過ぎない。であるならばこの映画のどこに魅力を見出していくべきなのか途方に暮れてしまった。大文字の他者のために命を賭ける個人の犠牲を賛美するような思想の映画も、この時代に観ればカタルシスよりも危うさが先んじてしまう。

  • 映画監督

    宮崎大祐

    共感することが不可能に近い浅薄な人間ドラマと、時折挟み込まれる「人民の勝利」を謳う政治的メッセージを見ていると、こんなものは単なる三流プロパガンダ映画だと切り捨てたくもなるのだが、コンテクストを度外視して数分毎に繰り返される八百長災害の中を縦横無尽に動き回るカメラワークは技術的には優れており、もはやアニメなのかゲームなのか映画なのかもわからない奇妙な質感のロング・ショットの数々は、あらゆる境界が崩壊してしまった現代映画の相貌を獲得している。

1 - 3件表示/全3件