ドンバスの映画専門家レビュー一覧

ドンバス

2014年からウクライナ東部ドンバス地方で続くドンバス戦争を実話を元に描き、第71回カンヌ国際映画祭ある視点部門監督賞を獲得した戦争ドラマ。親ロシア派勢力(分離派)の政治工作によりウクライナ系住民との分断が深まる無法地帯ノヴォロシアの日常を活写。「国葬」などドキュメンタリーも手がける、ベラルーシ生まれウクライナ育ちのセルゲイ・ロズニツァ監督が、近代的な情報戦と前時代的なテロ行為が入り混じるドンバスの戦争の模様を、13のエピソードでダークユーモアを込めながら描く。第91回アカデミー賞外国語映画賞ウクライナ代表作品。
  • 映画監督/脚本家

    いまおかしんじ

    戦争下の人たちのキツイところをこれでもかと描く。相手側の捕虜が、みんなにいたぶられるとことか。最初は面白がって見ている人たちが、だんだん本気になって殴りつけたり殺せと叫んだり。車を略奪される男のポカンとした顔も忘れられない。冗談でしょって顔が、だんだんマジかよって顔に変わっていくのが怖かった。ブラックすぎる。笑えないのに、無理やり笑ってる感じ。ウンザリした気分で見るしかない。ラストはびっくりした。言葉もない。ただただびっくりした。

  • 文筆家/女優

    唾蓮みどり

    全てが作り物のようなのに、驚くほどにリアルなこの世界はなんだろう。戦争へと続く嫌な空気が蔓延している。映画だから、暴力的なシーンにも怪我人がおらず、誰も死んではいない、はず。そんな安心感がない。あの嘲笑の笑いは本当に下卑た笑いなのではないか、と不穏な気持ちになり耳にこびりつく。何度となく、この映画にフェイクニュース用のアクターが登場する。白く厚塗り化粧をしたピエロのような顔。それがこの映画そのものなのかもしれない。すごいものを見てしまった。

  • 映画批評家、東京都立大助教

    須藤健太郎

    始まりと終わりをフェイクニュースの撮影現場とするのは、この映画も同類と告げるため。わかりやすい作りだが、けっして居心地のいい作品ではない。主な原因はカメラの地位が安定させられないこと。しかも、あえていうならそれこそが本作の唯一の目的なのだ。手持ちでカメラの存在を強調するかと思えば、劇映画に特有のカット割りによってカメラの透明性に焦点が当てられる。その点、一度だけ動揺を隠さなかったとはいえ、あくまで記録に徹した「Maidan」(14)と大きく異なる。

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