FLEE フリーの映画専門家レビュー一覧
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米文学・文化研究
冨塚亮平
a-haのMVや高畑勲作品を思わせる手書き調のアニメ表現がまず目を引くが、程なくしてアニメが使用されている理由が判明し驚かされる。アフガン難民が甘受することを強いられてきた悲惨な境遇を作品化するにあたり、単純なドキュメンタリーではなくなんらかの想像力を介在させる必要があったという点は「ミッドナイト・トラベラー」とも通じるが、安心できる居場所を求める難民としての悲痛な思いは、同性愛をめぐるアミン個人の不安や逡巡と重ね合わされるからこそ、より痛切に伝わる。
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日本未公開映画上映・配給団体Gucchi's Free School主宰
降矢聡
壮絶で語りづらい固有の体験をどう映画化するかといった難問に、本作は単なる再現アニメーションではなく、インタビュー風景をもアニメーションで描くという回りくどい手法を用いる。他の誰でもなく「この人が語っている」ことの強度が支えのインタビューがアニメーションとなること、さらには実写からなる当時のニュース映像によって、アフガニスタンやモスクワの日常が巧みに織り込まれていく複雑な構成は、生々しさと抽象さが混じり合う不思議な語りを作り出している。
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文筆業
八幡橙
鑑賞後、さざ波のように深い余韻が押し寄せる。三、四年で十数回行われたというインタビューを基に、本人の声で綴られる幾層にも積み重ねられた渾身のドキュメンタリー・アニメ。故郷アフガニスタンを追われ、ロシアを経て十代で単身デンマークへ。同性愛者でもあるアミンの想像を絶する半生は、過酷かつ凄惨な場面よりむしろ、淡い恋心や家族と恋人の湛える愛など、それでも差し込む光にこそ胸揺さぶられる。慎重に核心へにじり寄る監督の繊細な視線が、どこまでも真摯で、柔らかい。
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