アキラとあきらの映画専門家レビュー一覧

アキラとあきら

『半沢直樹』『陸王』などのベストセラー作家・池井戸潤の累計発行部数70万部を突破した同名小説を映画化。対照的な宿命を背負った二人の若者〈アキラ〉と〈あきら〉が、メガバンクを舞台に、情熱と信念で現実に立ち向かう社会派エンターテインメント。小さな町工場の息子・山崎瑛(やまざきあきら)を竹内涼真、大手海運会社の御曹司・階堂彬(かいどうあきら)を横浜流星が演じる。同じ社長の息子同士でも、家柄も育ちもまったく違う二人が、破産寸前の企業グループの未来と4800人の人生を救うため、奇跡の大逆転劇を巻き起こす。監督は2022年夏、本作と「今夜、世界からこの恋が消えても」「TANG タング」が立て続けに公開され、快進撃が続く三木孝浩。
  • 映画・音楽ジャーナリスト

    宇野維正

    「心臓病を患った娘がいる工場の社長」のようなメロドラマ的サブ設定にはさすがに白けてしまうのだが、今やすっかり「日曜劇場」のデフォルメ演出&暑苦しい演技が視聴者/観客にもデフォルトとして浸透してしまった池井戸潤原作の映像化を、三木孝浩は柳田裕男のカメラの力を借りて自身の作家性に引き寄せることに成功している。特に御曹司役の横浜流星は当たり役で、「涼しげな土下座」という語義矛盾までをも見事に体現。尺の都合による、ダイジェスト的な食い足りなさは残るが。

  • 映画評論家

    北川れい子

    池井戸潤が描く仕事、組織、人間たちは、いまさら言うのもなんだが、かつて人気があったNHKの『プロジェクトX?挑戦者たち?』と被るところがあり、どんなに障害物が大きくても、必ず達成感がある。銀行が舞台の今回は、同期入社ながら背景が全く異なる2人を主人公に、それぞれの信念を描いていくが、演じているのが若手の売れっ子系、なにやら硬派のアイドル映画ふうな印象も。彼らを補佐するベテランの俳優たちはさすがで、中でも部長役・江口洋介は座布団二枚!!

  • 映画文筆系フリーライター。退役映写技師

    千浦僚

    バブル期の傲慢かつ放漫な経営が招いた危機という原作設定から時代的な要素を外したため、屈折した金持ち一族の次男坊勢は悪く言えば抽象的になったが逆に言えばその主題は普遍的になった。愚行の臨界点に達するユースケサンタマリア演じる叔父のキャラと芝居が良い。その他登場人物全員が明確にその性質を表現していて曖昧さがない。主演竹内涼真が、いま日本社会で求められる公明正大、隠蔽なし忖度なし慈愛あり、という池井戸潤世界の正義を体現するスケール感で好ましい。

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