アイ・アム まきもとの映画専門家レビュー一覧

アイ・アム まきもと

「舞妓Haaaan!!!」「謝罪の王様」に続く、阿部サダヲ主演・水田伸生監督によるヒューマンコメディ。人知れず亡くなった人を埋葬する「おみおくり係」として役所で働く牧本は、孤独死した老人・蕪木の部屋を訪れ、彼の娘らしき少女の写真を発見し、娘探しに奔走する。共演は「海辺の生と死」の満島ひかり、「罪の声」の宇崎竜童。原作は、ウベルト・パゾリーニの「おみおくりの作法」。
  • 映画・音楽ジャーナリスト

    宇野維正

    中盤を過ぎて、ようやく満島ひかりや國村隼が画面に登場してから吸引力のある物語として駆動し始めるが、そこに到るまでの主人公の人とナリを説明していくパートが単調な上に長い。原作としてクレジットされているウベルト・パゾリーニの「おみおくりの作法」を観たときも思ったが、そもそもこのキャラクターにまったく魅力を感じないのは、自分が極端なほど共感性に欠けているからだろうか(そんな気もしてきた)。嫌なヤツとして描かれる上司の言動は一つも間違ってないと思う。

  • 映画評論家

    北川れい子

    黒澤明「生きる」の令和版を思わす、軽妙でくすぐりが効いたヒューマンドラマの佳作である。市役所の福祉課おみおくり係・牧本の、クセのあるキャラクターを軸にして展開する、孤独死した男の縁故、縁者探し。冒頭で牧本の律義でこだわりの強い性格をしっかり見せているのが効果的で、阿部サダヲ、さすがに巧い。孤独死した男のいくつもの情報が牧本のキャラとクロスするのも絶妙で、漁村ほかのロケ場所も活き活き。寂しくも温かなラストに流れる有名な楽曲も実に好ましい。

  • 映画文筆系フリーライター。退役映写技師

    千浦僚

    三十年ほど前、私が学生になって独り暮らしを始めてすぐに隣室住人が孤独死、初夏にしばらく遅れてそれは気づかれた。挨拶を交わしたこともない人物だが彼に教えられた死臭は忘れぬ。死後の世界が無だとしても、ひとは看取られて世を去るほうが環境のため、人類全体のためだ。それを知るまきもと氏は滑稽にみせてハードな男。鼻下にメンタムを塗る人物はFBI捜査官クラリス・スターリング以来。本作は無縁社会日本に問う寓話、かの醜悪な国葬に対置される無数の無念を謳う佳作。

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