キャスティング・ディレクター ハリウッドの顔を変えた女性の映画専門家レビュー一覧

キャスティング・ディレクター ハリウッドの顔を変えた女性

    ハリウッドで長年活躍したキャスティングの先駆者マリオン・ドハティを中心に、キャスティングの仕事に迫るドキュメンタリー。スタジオシステム方式からアンサンブルキャストへ移行する道筋をつけ、アメリカン・ニューシネマの到来を告げた彼女の功績を辿る。マリオン本人をはじめ、マーティン・スコセッシ、ロバート・デ・ニーロ、ウディ・アレン、クリント・イーストウッドなど、数々の映画人が出演。
    • 米文学・文化研究

      冨塚亮平

      これまで日の当たらなかったキャスティングの視点から再検討される、目から鱗が落ちるようなもう一つのハリウッド映画史に蒙を啓かれる。中心に据えられる先駆者マリオン・ドハティの数々の功績の中でも、とりわけロバート・レッドフォードの役柄をめぐる助言やジョン・ヴォイト、メル・ギブソンの起用は、彼らのその後の俳優人生に多大な影響を与えたものとして印象的だ。後進に続く流れを示すことで、アカデミーに反して彼女たちの仕事を改めて正当に評価しようとする構成も良い。

    • 日本未公開映画上映・配給団体Gucchi's Free School主宰

      降矢聡

      語られるのは、容姿が重視される映画スターからリアリティで勝負する俳優に変わり、現在は若さと流行の時代へと移ったハリウッドにおけるキャスティング史の変遷。個性豊かな俳優たちが彩る画面はそれだけでめっぽう楽しい。本作には人種やジェンダーという観点はほぼ抜けているが、キャスティング・ディレクターという今まで軽んじられてきた職種の名誉を復権しようとする本作の試みは、プロデューサーや監督といった権威の横暴が様々に明るみに出てきた昨今、とても意義深い。

    • 文筆業

      八幡橙

      キャスティング・ディレクターとは何か、その道を拓いたマリオン・ドハティの業績を中心に掘り下げた2012年の作品。「真夜中のカーボーイ」のジョン・ボイトや「明日に向って撃て!」のロバート・レッドフォードなど、アメリカン・ニューシネマ黄金期へと時を戻し、名優誕生の裏に光る彼女の慧眼を辿ってゆく。懐かしい名場面はそれだけで心躍るが、「ディレクター」の名称をよしとせず、アカデミー賞に配役部門を頑なに設けぬ全米監督協会に、今なお続く差別の根幹を見た。

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