スピリットウォーカーの映画専門家レビュー一覧

スピリットウォーカー

ハリウッドでのリメイクが決定した韓国製SFアクション。交通事故現場で目覚め、すべての記憶を失った男。しばらくすると彼は、また馴染みのない場所で、別の顔になって目を覚ます。なぜか彼は、12時間ごとに異なる人間の体に入れ替わっていたのだ……。出演は「マルモイ ことばあつめ」のユン・ゲサン、「LUCK-KEY/ラッキー」のイム・ジヨン。
  • 米文学・文化研究

    冨塚亮平

    「メメント」にひねりを加えたような設定でP・K・ディック的な記憶とアイデンティティをめぐるテーマを追求する、という作品の根幹を成すアイディアは、ツッコミどころを数多く含む展開の大味さを補って余りある面白さ。難解な設定を早めに説明しすぎないようにしつつ、同時に観客を追いていかないよう努めるバランス感覚も悪くない。いささか詰め込みすぎにも感じられるガンアクションやカーチェイスの大盛り具合も、邦画ではなかなか真似できないスケール感は評価できるか。

  • 日本未公開映画上映・配給団体Gucchi's Free School主宰

    降矢聡

    記憶喪失に加え、12時間ごとに他人に乗り移ってしまう意味不明な現象に、それっぽい理由をつけず無茶苦茶な説明で強引に済ましているところにまず好感が持てる。またこの無茶な設定による、リニアな時間進行のなか、立場が異なる複数の視点から物事を見つつも、実際は主人公ただひとりの目線でストーリー、つまりは現在巻き込まれている事件の全貌と、自分の正体に迫っていくという実に不思議な語り口が魅力的。ただし、若干上手く作られた逆算問題を見せられている感はある。

  • 文筆業

    八幡橙

    事故に遭った男。ガラスに映る顔は全く別の誰かだ。突如カメラがすーっと引き、周りの景色が滑らかに変わってゆく。開巻早々、クリストファー・ノーランばりの映像ギミックが異世界へと誘う。12時間ごとに違う人間の体に入り込む“幽体離脱者”の男が己に降りかかった厄災の真相に近づく過程を、きっちり王道に沿ったアクションを織り交ぜ描く異色ノワール。時間や記憶、夢と現の曖昧な境目など、「メメント」を初めて観た感触を思い出した。ユン・ゲサンの芝居の力に改めて感服。

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