女子高生に殺されたいの映画専門家レビュー一覧

女子高生に殺されたい

『帝一の國』『ライチ☆光クラブ』の人気漫画家・古屋兎丸の画業20周年記念作品を「アルプススタンドのはしの方」の城定秀夫監督が実写化。女子高生に殺されたいがために教師になった東山春人は、理想的な殺され方の実現のため練ってきた計画を密かに進める。自分殺害計画を企てる高校教師の東山春人を「総理の夫」の田中圭が、元恋人の深川五月を「ロマンス」の大島優子が演じるほか、「もみの家」の南沙良、「由宇子の天秤」の河合優実らが生徒役で出演。
  • 脚本家、映画監督

    井上淳一

    唸った。映画観てから原作読んだが、こうやるのかと。女子高生に殺されたいという願望を持つ男をこうも突き放さずに描けるものか。ASDと解離性同一症の女子高生コンビ然り。「障害」をちゃんと個性として描く志の高さ。マンガでしか成立しえない諸々を生身の人間で成立させる困難をいともたやすく乗り越え、原作より面白いエンタメに仕上げている。城定秀夫という人は不思議だ。あれだけ書いて撮って、まったく磨耗していないとは。どれだけの才能なんだ。映画界は大切にしないと。

  • 日本経済新聞編集委員

    古賀重樹

    オートアサシノフィリア(自己暗殺性愛)という一種の性的倒錯を題材にしたミステリー。ひと昔前なら変態と呼ばれそうな性癖を、極力、変態的に見せない知的なアプローチで撮っているところに好感をもった。良い意味で画面が清潔なのだ。ただ、ミステリーとして成功したかというと疑問。女子高校生のそれぞれのキャラクターが立っておらず、教師役の田中圭に怖さがない。何より殺しの先が読めてしまう。ヒッチコックは稀有な例外として、やっぱり性的倒錯ミステリーは難しい。

  • 映画評論家

    服部香穂里

    究極のナルシシズムと自己破壊衝動との表裏一体感をしなやかに体現する田中圭を核に、ややこしい三角関係に陥る変わり者を、奇を衒わず演じる役者陣が光る。歪んだ大願成就へと突き動かされていく高校教師のみならず、彼の独善的かつ周到な計画の駒に過ぎなかった人物までもが、譲れない、守りたい何かのために眠れる力を覚醒させ、死へのカウントダウンと逆行するがごとく、生き生きと躍動する妙。熱しやすく冷めやすい今の気分を冷静に捉えつつ、執着=愛を謳うヤバさに鳥肌。

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