ある職場の映画専門家レビュー一覧
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脚本家、映画監督
井上淳一
出演者が全員共同脚本でクレジットされている。一緒にリアルな芝居を追求したのだろうが、繰り返される台詞はリアルというよりユルい。不必要なシーンも多く構成もユルい。ネットに被害者情報を流す犯人を仲間内に作るなど、作為とリアルもアンバランス。同性愛も効いてない。現実を一箇所に集めた時点で現実じゃないし。テーマを追求する余り、映画としての面白さの追求が二の次になっていないか。リアルをユルい脚本の言い訳にしてはダメ。まずは脚本。一スジ二ヌケ三ドウサですよ。
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日本経済新聞編集委員
古賀重樹
「日本の夜と霧」を連想させるようなディスカッションドラマとして興味深く見た。セクハラ事件が起こった職場の社員たちが保養所に集まるという設定自体が現実離れしているけれど、さまざまな登場人物を一つの街、一つの部屋に閉じ込めて向き合わせたことに意味があるのだ。そんな非日常空間が一種の自白装置となって、十数人の登場人物は職場や社会で押し隠していた本音と悪意をあらわにする。即興の対話を長回しで撮るという方法も、俳優たちを追い詰める武器になったろう。
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映画評論家
服部香穂里
セクハラ事件に揺れる某職場の一行が赴く江の島にて、リゾート気分や酒の力も手伝い、被害者と周囲との温度差や各々の赤裸々な本音が徐々に露わとなる。修羅場を創出する意図は分かるが、全篇の大半を占める旅行(×2)の趣旨や参加者の動機が曖昧ゆえ、作為的なシチュエーションに映るのは難。疑心暗鬼に陥る当事者に容易に共感させず、自らの正義を叫ぶ同僚や上司の物言いにも説得力を与えることで、厄介な波紋を広げ続けるハラスメント問題への、自身の見解も試される対話劇。
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