ツーアウトフルベースの映画専門家レビュー一覧

ツーアウトフルベース

「ミッドナイトスワン」の内田英治が脚本を手掛けた青春ドラマ。高校球児のイチとハチは、部内の不祥事で甲子園出場が取り消されたことから人生が一変。10年後、堕落した生活を送っていた二人は、ひょんなことからヤクザや不良グループから追われる羽目に。出演は、「空飛ぶタイヤ」の阿部顕嵐、「胸が鳴るのは君のせい」の板垣瑞生、「樹海村 じゅかいむら」の工藤遥。監督は、「レディ・トゥ・レディ」の藤澤浩和。
  • 脚本家、映画監督

    井上淳一

    内田英治は器用だと思う。ただそれがいい方向に作用していない。ガイ・リッチーの初期をショボくした感じではいけないと思う。同じ時制を違う視点でやるという魔法は便利な発明で上手くいけばいいけど、下手にやると無惨。本作は悪い例で、実はこういうことがありましたというタネあかしが説明に過ぎず面白くもなんともない。脇役にはイロがあるが、主人公ふたりに魅力がない。高校野球の挫折も効いていない。藤澤浩和も「レディ・トゥ・レディ」の乱暴な良さがなくなってしまった。

  • 日本経済新聞編集委員

    古賀重樹

    甲子園出場の夢が絶たれた元球児の不良二人組がドラッグとアメ車に手を出したあまり、ヤクザと半グレに追われ、悪夢のような1日を過ごす。ひと昔前にはやたらとあった不良少年のバディムービーなのだが、今となっては懐かしい。主演2人のイケメンはともかく、半グレの親玉の後藤剛範の存在感が相変わらず強烈。それはそうと冒頭に念入りに高校野球のシーンを見せながら、最後まで「二死満塁」の状況が生きてこないのはなぜだろう。やっぱり設定が時代遅れなのか。

  • 映画評論家

    服部香穂里

    最悪、どん底とのたまう割に、野球への情熱や夢破れた挫折がイマイチ伝わらず、終始お気楽そうなふたりに感情移入しづらいため、そんな彼らの絶体絶命からの逆転劇にも、高揚感は得られず。むしろ、途中参戦の元野球部マネジャー(工藤遥)の地に堕ちた感が何気なく壮絶で、前途洋々なはずの彼女に何があったのか、そちらの方が気になる。映画オタクの昔気質なやくざ(渋川清彦)ら個性派キャラクターも、タランティーノごっこの域に留まっているような、もどかしさを残す。

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