凪の島の映画専門家レビュー一覧

凪の島

「喜劇 愛妻物語」などに出演、音楽ユニット『Foorin』のメンバーとして活動した新津ちせ主演の人間ドラマ。両親が離婚し、祖母が医師を務める山口県の瀬戸内にある島に来た凪は、島の住人と交流するうちに笑顔を取り戻していくが、父が突然現れ……。監督は、山口県下松市市制75周年記念映画「恋」(2014)など山口県を舞台にした作品も多い長澤雅彦。山口県下松市を中心に周南市、柳井市で撮影され、心に傷を負った少女の成長を描く。共演は、「劇場霊」の島崎遥香、『快盗戦隊ルパンレンジャーVS警察戦隊パトレンジャー』の結木滉星ほか。
  • 脚本家、映画監督

    井上淳一

    申し訳ないけれど、全く乗れなかった。丁寧に作ってあるし、ロケーションもいい。なのに映画の匂いがしない。エピソードが団子だからか。芝居が一様にベタだからか。底に流れる思想か。ラストは島で30年ぶりの結婚式。ということは人口流出が続いたということ。少女の父はアル中を克服し、母にやり直そうと言う。でも酒に走った理由は描かれない。本作はそういう負の要素を周到に避ける。それと結婚や家族の再生が大団円というのはいい加減やめないか。そんなのキセキでも何でもない。

  • 日本経済新聞編集委員

    古賀重樹

    小学校の児童が数人しかいない瀬戸内の小さな島の物語なのだが、主人公の少女だけでなく、およそあらゆる登場人物がそれぞれに心の傷を抱えている。両親の不和、自身の離婚、親の病、子どもの死……。どれも家庭に起因する傷だ。生きづらさを抱えた人々がどう恢復していくか。そんな島の癒しの力を、子どもたちのひと夏の冒険に重ねて描いているところがこの作品の魅力。久しぶりの映画出演となる加藤ローサが、アラフォーのシングルマザーとしていい味を出している。

  • 映画評論家

    服部香穂里

    ちいさな島なのに、主要な登場人物の大半が、老若男女問わず苦悩や葛藤を抱えているため、どうしても描写が広く浅くなる中で、木野花と嶋田久作コンビが、さりげない間合いや言外にも紆余曲折の30年間を忍ばせ、見せ場をつくる。しかし、幼い実の娘をパニック障害へと追いやってしまうほど深刻な依存症と格闘中のはずの外科医にまで、あまりにあっさりと再起を促すのは、かつての過ちも見逃すことなく糾弾され尽くす時勢などを鑑みても、甘ったるいファンタジーに映る。

1 - 3件表示/全3件