凪の島の映画専門家レビュー一覧
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脚本家、映画監督
井上淳一
申し訳ないけれど、全く乗れなかった。丁寧に作ってあるし、ロケーションもいい。なのに映画の匂いがしない。エピソードが団子だからか。芝居が一様にベタだからか。底に流れる思想か。ラストは島で30年ぶりの結婚式。ということは人口流出が続いたということ。少女の父はアル中を克服し、母にやり直そうと言う。でも酒に走った理由は描かれない。本作はそういう負の要素を周到に避ける。それと結婚や家族の再生が大団円というのはいい加減やめないか。そんなのキセキでも何でもない。
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日本経済新聞編集委員
古賀重樹
小学校の児童が数人しかいない瀬戸内の小さな島の物語なのだが、主人公の少女だけでなく、およそあらゆる登場人物がそれぞれに心の傷を抱えている。両親の不和、自身の離婚、親の病、子どもの死……。どれも家庭に起因する傷だ。生きづらさを抱えた人々がどう恢復していくか。そんな島の癒しの力を、子どもたちのひと夏の冒険に重ねて描いているところがこの作品の魅力。久しぶりの映画出演となる加藤ローサが、アラフォーのシングルマザーとしていい味を出している。
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映画評論家
服部香穂里
ちいさな島なのに、主要な登場人物の大半が、老若男女問わず苦悩や葛藤を抱えているため、どうしても描写が広く浅くなる中で、木野花と嶋田久作コンビが、さりげない間合いや言外にも紆余曲折の30年間を忍ばせ、見せ場をつくる。しかし、幼い実の娘をパニック障害へと追いやってしまうほど深刻な依存症と格闘中のはずの外科医にまで、あまりにあっさりと再起を促すのは、かつての過ちも見逃すことなく糾弾され尽くす時勢などを鑑みても、甘ったるいファンタジーに映る。
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