THE RESCUE 奇跡を起こした者たちの映画専門家レビュー一覧

THE RESCUE 奇跡を起こした者たち

    2018年6月に起きたタイ洞窟遭難事故とその救出作戦の舞台裏に迫ったドキュメンタリー。タイ北部チェンライ県のタムルアン洞窟探検に入った少年12人が、豪雨による浸水で遭難。難航する救出作業に協力するため、世界各地から救援隊が集まるが……。監督は、アカデミー賞長編ドキュメンタリー賞に輝いた「フリーソロ」のエリザベス・チャイ・ヴァサルヘリィとジミー・チン。
    • 米文学・文化研究

      冨塚亮平

      「アルマゲドン」×「すみっコぐらし」といった趣の一癖も二癖もあるダイバーチームの面々はそれぞれに魅力的だし、救出劇そのもののインパクトも申し分ない。しかし、そもそも映画化できた時点で最悪の事態は回避されているに違いないと観客に伝わってしまうのは明らかなのだから、不特定多数の人間に届ける意思があるのなら、「15時17分、パリ行き」とまでは言わずとも、中途半端にサスペンス感覚を盛り上げようとするのではない、なにか別の語り口の工夫が必要だったのでは。

    • 日本未公開映画上映・配給団体Gucchi's Free School主宰

      降矢聡

      世界中が見守ったタイの洞窟に閉じ込められた子供たちの救出ドキュメンタリーだが、単に奇跡の救出劇を描くわけではない。特に前半部分は洞窟の空間が神秘的に描かれ、スポーツとしての洞窟潜水の魅力も語られるところがこの映画の特異なところだ。そして子供たちを救うために各国の有能なダイバーたちが集結する場面はリアルアベンジャーズのよう。事件の真相や安否のサスペンスではなく、正面から救出にあたる人々を格好良く捉える作りはこの映画のなによりの強みだろう。

    • 文筆業

      八幡橙

      絶望的に立ち塞がる分厚い壁を、小さな偶然や世界中から集まった人々の本気の積み重ねによって少しずつ、着実に打ち砕いてゆくその過程。いくら結末を知っているとはいえ、手に汗握り、固唾を呑んで見つめずにはおれない。救出を完遂した世界屈指の洞窟ダイバーたちを苛むプレッシャーや葛藤、さらには狭く暗い場所に彼らが安らぎを求めた理由にまで潜行してゆく、ドキュメンタリーとしての深度に何より感じ入った。今、この時代ゆえになお、改めてずっしり響くものがある。

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