あしやのきゅうしょくの映画専門家レビュー一覧

あしやのきゅうしょく

芦屋市制施行80周年記念映画として学校給食をテーマにしたヒューマンドラマ。芦屋の小学校で働く新米栄養士・菜々は、予算や子どものアレルギー、宗教上の問題など、様々な課題に対処しながら、子どもたちに美味しい給食を食べてもらおうと奮闘するが……。出演は、「映画 賭ケグルイ」シリーズの松田るか、「蝉しぐれ」の石田卓也。監督は、「みとりし」の白羽弥仁。
  • 脚本家、映画監督

    井上淳一

    給食を巡るあれこれ。アレルギーやイスラム教の子供で多様性をやるなら、給食でしかまともに食べられない子供の貧困もやるべき。学校も図書館も美しい。金持ちの芦屋市が特別だと客観視する視点が必要では。教育映画だってそれくらいやっている。いかにもの脚本に芝居に音楽。人間ドラマはどこに。市制80周年記念で描けないことがあるのは分かる。ならば、そういうものにタカって映画作るのはそろそろやめにしよう。自ら映画の可能性を捨てることは自らの首を絞めることと同じだ。

  • 日本経済新聞編集委員

    古賀重樹

    大鍋で作る煮物はおいしそうだし、卵アレルギーの子への湯葉のオムライスやムスリムの子への豆腐のハラルフードもすてきだ。スコッチエッグは忘れられない思い出になるだろう。「食べることは生きること」という言葉に異論はないし、栄養士と調理師の努力に頭が下がる。芦屋の街の光景も、情緒的な音楽も、丁寧に意図を説明する演技も、芦屋市のプロパガンダ映画としては最高の出来栄え。だからこそ、これを街の映画館で見よ、映画として評価せよ、というのは拷問に近い。

  • 映画評論家

    服部香穂里

    阪神淡路大震災後に生まれた栄養士1年生と、ある小学校のクラスの最終学年とを連動させ、給食をかけがえのない青春の一部として描く構成が活きる。“食べることは生きること”という主題は、コロナ禍の今、より切実に響く。ビゴのパンや村上春樹など芦屋PRも怠らず、様々な理由で同じメニューを食べられぬ生徒のため知恵を絞るスタッフの無理難題にも応える生産者の心意気や、子ども相手にも妥協せぬ調理師の矜持に、お仕事ものの趣も加わる、ご当地食育エンタテインメント。

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