ライフ・ウィズ・ミュージックの映画専門家レビュー一覧

ライフ・ウィズ・ミュージック

世界的人気を誇るシンガーソングライター・Siaが原案・脚本・製作・初監督を務めたポップ・ミュージック・ムービー。孤独な主人公ズーが、祖母の死を機に自閉症の妹・ミュージックと暮らし始めたことから、隣人たちの助けを得て徐々に愛を知り、居場所を見つけるまでを描く。かつて薬物やアルコール依存症に陥り、自殺をはかるほど絶望したというSia。そんな彼女を助けてくれたのは友人と音楽だったという自らの体験がベースになっている。主人公のズーを演じるのは、「あの頃ペニー・レインと」から幅広いジャンルに出演するケイト・ハドソン。妹のミュージックを演じるのは、Sia の楽曲「シャンデリア」のMVのダンスで注目され、スティーヴン・スピルバーグの「ウエスト・サイド・ストーリー」にも出演しているマディ・ジーグラー。隣人のエボ役には、ブロードウェイミュージカル『ハミルトン』でトニー賞最優秀ミュージカル俳優賞に輝いたレスリー・オドム・Jr.。孤独や苦悩、葛藤のドラマと並行して、ミュージックの空想やズーやエボたちの心象風景が音楽シーンとなってポップ&カラフルに立ち現れる。Siaが 12 曲もの劇中歌を書き下ろしたうえ、キャスト陣が圧巻の歌とダンス・パフォーマンスを披露。シリアスな題材を中心に据えながらも、音楽が愛と希望を与えてくれる力強い物語となっている。
  • 映画監督/脚本家

    いまおかしんじ

    女の子がダンスしてるときの表情が、くるくる変わるところがめちゃくちゃ可愛かった。出てくる人たちがとにかく全員いい人で、それだけで泣けてくる。お姉ちゃんがアホで、うまくいかなくて、間違えまくって、物語は進んでいく。このお姉ちゃんがどうなるのか。見ていてハラハラする。自閉症の妹が一人でいるときの危うさにもドキドキした。周りの人たちに支えられていたのは、妹だけではなかった。人は一人では生きていけない。誰かといないとつらくてしょうがない。

  • 文筆家/女優

    唾蓮みどり

    自閉症、アルコール依存症、HIV感染者と社会的弱者たちに光を当てているといえば聞こえはいいが、踏み台にしているようにしか見えない。ポップスターでもある監督の実体験がベースに、といえば文句が言えないことも織り込み済みで。だいたい、冒頭から物語を展開させるためにおばあさんの死を利用することも許しがたい。これまでも自らの曲のMVを監督してきたという“卓越したセンス”についていくことができず、大変に戸惑った。涙は大切な日のためにとっておきたい。

  • 映画批評家、東京都立大助教

    須藤健太郎

    どんな高尚な理由があろうと許容しがたい。本作のエイブルイズムはすでに批判されているが、正直それ以前の問題だと思う。自閉症を物語と演技と振付けのアクセントにって、一体どういう神経をしているのか。表情も声も身振りも様式化されたかたちで「自閉症」が表現されていてまったく見るに堪えないし、太陽の光を浴びて「普通」の表情に戻すくだりは醜悪そのものだ。また、NY生まれの俳優にアフリカ訛りで話させるのも根は同じ。マイノリティの物真似をして何が楽しいのか。

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