極主夫道 ザ・シネマの映画専門家レビュー一覧

極主夫道 ザ・シネマ

おおのこうすけの人気任侠コメディ漫画を原作にした玉木宏主演のTVドラマの劇場版。結婚を機に足を洗い専業主夫となった元・極道の龍。仲間たちと共に保育園の土地を狙う地上げ屋に対抗する傍ら、隠し子騒動や恋愛騒動など相次いでトラブルに見舞われ……。TVドラマ版に続き『おっさんずラブ』シリーズを手がけた瑠東東一郎がメガホンを取り、極道時代の外見や言動が抜けないながらも高い主夫力を発揮する黒田龍役の玉木宏らキャスト陣が揃う他、『おっさんずラブ』シリーズの吉田鋼太郎がイタリアかぶれのマフィアを、ドラマ『それでも愛を誓いますか?』の松本まりかが龍に惚れる元レディースを、「花宵道中」の安達祐実が立ち退きを迫られる保育士を演じる。
  • 映画・音楽ジャーナリスト

    宇野維正

    平均視聴率一桁の民放連続ドラマが映画化されるのも珍しいことではなくなったが、製作委員会に名を連ねてリスクヘッジを図っているメディア各社はともかく、興行面における勝算はどこにあるのだろう? ネットフリックスでアニメ化もされている原作コミックの魅力が本作からはさっぱりわからず、テレビ局映画御用達役者のおちゃらけ演技や、芸人が演出された形跡もなく芸人のキャラそのままで画面に放り出される姿に鼻白むばかり。「ブルシット・ジョブ」という言葉が頭に浮かんだ。

  • 映画評論家

    北川れい子

    言っちゃあなんだがこの作品を一番面白がっているのは、玉木宏や竹中直人など、元極道役の俳優たちに違いない。極道時代の言動が抜けない堅気を神妙に演じているのだが、逆にそれがとってつけたようで、さぞや撮影現場では監督のOKの声が響いたとたん、俳優たちもスタッフもみな笑いこけ。実際、笑いを堪えて演じているのが見え見えの俳優も。オペラ好きの現役極道役の吉田鋼太郎も妙に嬉しそうだし。と、肝心の主夫の活躍より俳優たちの演技ばかりに目が行く毒のないコメディだ。

  • 映画文筆系フリーライター。退役映写技師

    千浦僚

    やくざで家事するタイプの人は淡々とやる。事務所番や服役で身につける場合が多い、と聞く。刑務所ルポで、新入りの筆者が雑居房の古畳が塵ひとつないキレイさながら妙に黒光りするのはなぜと思いきや起床後その房の受刑者が立てた手のひらの小指側で隅々まで手箒して掃き清めるのを見て納得、との文章をかつて読んだ。その渋いリアル路線でないなら、ファンタジックヤクザ主夫の家事姿に、主婦業を舐めるヤツはシバく!と語らせる、この優れた主題をもっと極めて欲しかった。

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