メタモルフォーゼの縁側の映画専門家レビュー一覧

メタモルフォーゼの縁側

文化庁メディア芸術祭マンガ部門新人賞など数々の賞に輝いた鶴谷香央理の同名コミックを芦田愛菜と宮本信子のダブル主演で映画化。BL漫画を読むことが趣味の女子高生うららと、書店で偶然出会ったBL漫画に魅了された75歳の老婦人・雪の交流の物語。共演は、なにわ男子の高橋恭平、「偶然と想像」の古川琴音。監督は「青くて痛くて脆い」の狩山俊輔。
  • 脚本家、映画監督

    井上淳一

    芦田愛菜が嫌いだった。というか子役が、芦田愛菜的なモノが、嫌いだった。しかし本作で一変。ずっと何者かだった芦田愛菜は、何者かになれるはずないと諦めている少女をなぜあんなにビビッドに演じられるのか。彼女もまた居心地の悪さを感じているのか。少女の変化は微かだが、映画的躍動は大きい。嫌味ではない抑制。脚本演出俳優すべて見事。これ、表現者はみんな泣くんじゃ。あれだけ嫌いだったものを好きにさせるなんて、映画ってスゴい。芦田愛菜のこの先をずっと見ていたい。

  • 日本経済新聞編集委員

    古賀重樹

    何事にも自信のない女子高校生の自分探しの物語であり、そこから一歩踏み出す物語。芦田愛菜が独特のリアリティーをもって演じている。すでに少女ではないけれど、性的な魅力にあふれるというわけでもない。そんな中途半端な年ごろの感情を、実に理知的に表現している。ある時期の高峰秀子みたいで、稀有な女優だ。メンターとしての老婦人を演じる宮本信子もまた知性が嫌味なく出せる女優で、はまり役。二人が絡むことで、昨今の日本映画には稀な清潔なドラマになっている。

  • 映画評論家

    服部香穂里

    世代こそ違えど、いい年齢の重ね方をしてきた女優同士が、満を持して再共演を果たす幸福感。ふたりが夢中になるBL作品の盛り上がる展開を、インパクト大の漫画カットを的確に選び凝縮して映し出すことで、家族にも理解されぬ趣味を分かち合う友情の醍醐味や、それを育む高揚感も追体験できる。いろいろと逃げてきたうららが初めて真剣に挑む設定の、原作者自身の手になる漫画が醸す深い味わいに、原作への敬意を最高の実写化で証明せんとする製作陣の、自信みなぎる気概も窺える。

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