ギャング・オブ・アメリカの映画専門家レビュー一覧

ギャング・オブ・アメリカ

全米犯罪シンジケートを率いアメリカの暗黒街を支配したマイヤー・ランスキーを取り上げた伝記犯罪ドラマ。作家ストーンは伝説のギャング、ランスキーの伝記を執筆することに。インタビューで語られた半世紀を超える彼の人生は、壮絶な抗争の歴史でもあった。年老いたランスキーを「レザボア・ドッグス」のハーヴェイ・カイテルが演じる。また、「アバター」のサム・ワーシントン演じる作家のストーンは、本作の監督エタン・ロッカウェイの父親であるロバート・ロッカウェイをモデルにしている。
  • 米文学・文化研究

    冨塚亮平

    アメリカの歴史を裏から動かしてきた伝説的マフィアの一代記という物語そのものは、当然ながら抜群に面白い。また、自身もユダヤ系であるハーヴェイ・カイテルの存在感は特筆もので、特にイスラエル絡みの場面での演技は役柄を超えたかのような凄みに達している。ただ、ことごとく冴えない回想場面での俳優陣からは、百戦錬磨のギャングの風格がまるで感じられず。モデルも含めればすでに何度も映画化されている題材を、今あえて再び取り上げる意義を示せたとは言い難いか。

  • 日本未公開映画上映・配給団体Gucchi's Free School主宰

    降矢聡

    密輸、賭博、兵器の売買など、現在のアメリカを構成する重要な事柄にすべて関わっている実在のマフィア、マイヤー・ランスキーという人物にまず驚き、そしてアメリカの裏・現代史がビジネス的な価値観で語り直される点が興味深い。一人のマフィアの半生では収まらないスケールを持ちながら、良くも悪くもコンパクトにまとまっているのは、ランスキー幼少時代のサイコロ賭博によって語られる「ゲームの支配者」になることというテーマが最初から最後まで一貫しているからだろう。

  • 文筆業

    八幡橙

    老境を迎えた伝説のマフィア、マイヤー・ランスキーが取材を受ける80年代と、彼が語る若き日の回想を交互に描き出す。消えた大金の謎や取材する作家自身の現状をも織り交ぜ、内容は単純ではないものの、緩急が淡く単調な印象が残った。観るべきは老ランスキーを演じるハーヴェイ・カイテル……なのだが、動きや人物造形に乏しく、持ち味を堪能し切れぬもどかしさが。作家のモデルが監督の実父とのことで、現在パートへの思いの強さが、ギャング映画としてのキレを薄めた感も少々。

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