夫とちょっと離れて島暮らしの映画専門家レビュー一覧

夫とちょっと離れて島暮らし

    「恋の渦」「サッドティー」などの俳優・國武綾が、都会に住みたい夫を東京に残し奄美群島の加計呂麻島に期間限定で移住したイラストレーター・ちゃずを追ったドキュメンタリー。集落の人々との交流や美しい自然との繋がりがちゃずにもたらしたものとは……。國武監督の夫であり「あ・く・あ ~ふたりだけの部屋~」などを手がけた監督・映像作家の中川究矢がプロデューサーを務める。監督夫妻は2021年2月に奄美大島へ移住、本作を完成させた。2021年10月16日~18日に奄美大島・ブックス十番館シネマパニックにて先行公開。
    • 脚本家、映画監督

      井上淳一

      失礼ながら安易に作ったドキュメンタリーかとタカをくくって見始めて、あまりの面白さに驚く。だって、2年の島生活の最後の2カ月だけ撮影って、普通そう思うでしょ。でもその2カ月から十分に2年が想像できる。ここまで無防備な主人公を魅力的に撮れたのは監督の人柄の賜物なのだろう。結局ドキュメンタリーも劇映画も人間なんだと改めて。彼女のこの後も見たいが、撮影後、夫と奄美に移住した監督の「夫とちょっと一緒に島暮らし」も見たい。その時は田舎の嫌なところも忘れずに。

    • 日本経済新聞編集委員

      古賀重樹

      夫婦が別居してそれぞれの土地で仕事をする。こういうライフスタイルは増えるのだろうと思う。島おこしに貢献し、東京の夫とも会話を欠かさず、何より島の自然の色に触発されて、描く絵が生き生きしてくる。撮る側である國武綾監督が被写体であるちゃずさんに共感しているから、一人のイラストレーターの成長物語としても楽しめる。でもやっぱり映画としては食い足りない。ここには良き面しか映ってない。テレビと映画は違うんじゃないかな。ライフスタイルと人生が違うように。

    • 映画評論家

      服部香穂里

      ちゃずさんの移住先の西阿室集落のひとたちの、大々的な送別会や、港で見せる転出・転入者への深い思いにグッとくる。東京にいた頃の彼女と絵も人格も変わったらしい一因も、集落の方々のウェルカムな寛容さにあるかもと想像する。別居期間が予定より延び続けても円満という稀有なカップルの事例ゆえ、そういう意味での参考にはあまりならぬのでは……と思いきや、最も感化されていたのが、監督自身と本作のプロデューサーも務めるその旦那さんだったとのオチには、ずっこけた。

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