スティルウォーターの映画専門家レビュー一覧

スティルウォーター

「スポットライト 世紀のスクープ」のトム・マッカーシーが、マット・デイモン主演で贈るサスペンス・スリラー。フランスのマルセイユを舞台に、殺人罪で服役する娘の無実を証明するため、真犯人を探し出そうとする父親が、やがて思わぬ真実に辿り着く。共演は「ゾンビランド:ダブルタップ」のアビゲイル・ブレスリン。
  • 米文学・文化研究

    冨塚亮平

    若い女性を襲ったある不幸な事件をめぐって展開する、階級・人種・性差をめぐる差異の力学が幾重にも絡み合う重厚で骨太な物語は見応え十分。マルセイユの風光明媚な景観の中で浮き続けるキャップにネルシャツ姿のマット・デイモンが、アメリカの白人労働者階級の紋切り型を過剰なほど強調しつつ、優しさと粗暴さを併せ持つ男を好演している。彼がほぼ共通点のないインテリ女優とその娘と一歩ずつ交流を深めていく展開の遅さには好感が持てたが、そのせいで尺が長くなりすぎた感も。

  • 日本未公開映画上映・配給団体Gucchi's Free School主宰

    降矢聡

    父娘の再生、冤罪の証明、異国での恋、貧困層、同性愛等々、多様な題材を盛りに盛り込みつつ語り口は簡潔に、一本の映画にまとめあげる手腕が光る。二時間をゆうに越える上映時間も、この長さこそが配慮と誠実さを追い求める現代映画の一つの争点でもあるような気もしてくる。社会に対するフラストレーションを静かに溜め込むマット・デイモンの重いガタイ、そして、優等生から反抗期役というキャリアを経て、良心と不良を併せ持つようになったアビゲイル・ブレスリンが良い。

  • 文筆業

    八幡橙

    無実を主張する娘のため、言葉の通じないマルセイユの街を奔走する父を描いたサスペンスだが、真実の行方以上に人間の描き込みの深さに心打たれた。出会いやダンスの場面など、異国で孤軍奮闘する主人公と現地に住む母娘との交流が繊細に綴られ、柔らかな光を生み出している。「人生は冷酷だ」と娘は呟く。それも一つの真だが、その裏にある逆説をも、映画は丁寧に掬い取る。禍も福も複雑に縒り合わされた、不器用な父と娘の、人生という名の縄。マット・デイモンの無骨さが、いい。

1 - 3件表示/全3件

今日は映画何の日?

注目記事