無聲 The Silent Forestの映画専門家レビュー一覧

無聲 The Silent Forest

台湾で実際に起きた事件を基にしたコー・チェンニエン監督による長編デビュー作。ろう学校に転校してきた少年チャン。同級生のベイベイとすぐに打ち解けたチャンだったが、スクールバスである“ゲーム”を目撃する。それは、残酷な現実の序章に過ぎなかった。ベイベイを演じたチェン・イェンフェイは長編映画初出演にして、第57回金馬奨 最優秀新人俳優賞、2021年台北映画祭 最優秀新人俳優賞を受賞した。
  • 映画監督/脚本家

    いまおかしんじ

    棒のようにか細い女の子が、バスの中でレイプされる。声を出せないので、誰にも気づかれない。気づかれても放っておかれる。逃げ場はない。ここで生きるしかない。転校生の男の子も彼女を救えない。彼も主犯の男の子にフェラチオを強要される。あまりの無残さに「やめて!」と声を出してしまった。追い詰められた二人のラブが物語を動かすかと思いきや、話は主犯の男の子へ転がっていく。できればもう少し二人のラブストーリーが見たかった。ラストも不安が残る。

  • 文筆家/女優

    唾蓮みどり

    ろう学校で起こった性暴力事件。あえて見せない部分、台詞でなく手話による会話の静けさを意識的に映し出しているぶん、ホラー調の効果音や演出をしてしまうのがもったいない。韓国映画「トガニ」を思い出し、本作の大人たちの頼りなさにはイライラさせられる。協力的な先生もいい人ではあるのだけど……。事件の渦中にいるのが生徒同士というのが何とも惨い。被害を被害だと認識できない、したくないこの絶妙な心理描写のバランスに始終ハラハラさせられた。

  • 映画批評家、東京都立大助教

    須藤健太郎

    実話を基にしたとすれば、なおさらこの題材でこの作劇はない。理由は三つ。①実際にあった事件という具体性が、ここでは虐待の連鎖とか悪には悪の理由があるといった一般性にすり替えられている。②話の展開がいわゆる謎解き型で、すべてを因果関係で説明している。探偵役のワン先生がなぜそんなことをしたのかと聞くと、みな滔々とその理由を語る。③この作劇の構図の中では、悪の根源として設定される美術教師が空白のままにとどまっているため、一番肝心の発端が不問にされる。

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