ザ・ボーイ 鹿になった少年の映画専門家レビュー一覧

ザ・ボーイ 鹿になった少年

「モンスターズ 悪魔の復讐」のクレイグ・マクニール監督によるサイコスリラー。母親が出ていき、一緒に暮らすアルコール依存症の父親からはあまり構われずにいる孤独な少年テッド。ふとしたきっかけから死に魅せられたテッドの中に邪悪さが芽生え始め……。アメリカの子役ジャレッド・ブリーズ、「ダンサー・イン・ザ・ダーク」のデヴィッド・モースらが出演。2015年サウス・バイ・サウスウェスト(SXSW)、シッチェス・カタロニア国際映画祭出品作品。劇場発信型映画祭『のむコレ’21』上映作品。
  • 映画監督/脚本家

    いまおかしんじ

    意味ありげな音楽に身構えるのだが、何も起きない。なんか変な映画。たまに来る客へのいたずら。少年らしい無邪気さが怖い。プールでの戯れ。殺しちゃうんじゃないかとドキドキした。少年のいたずらが、悪意なく過激になっていくのが切ない。誰かこの少年を助けてくれ!と言いそうになった。ラストの若者たちの馬鹿騒ぎは、本当に腹が立った。なんとなく退屈に思えたのは、どこかで見たことあるような描写が多かったからかもしれない。少年のふてぶてしい顔が記憶に残る。

  • 文筆家/女優

    睡蓮みどり

    主人公の少年テッドの無表情が良い。特にタイヤで作ったブランコを無表情で漕いでいるところが素晴らしかった。何かが起きそうでなかなか起こらない、この思わせぶりな感じはこの手のホラーサスペンスではとても大切だ。重たい空気感が始終漂い、食事も美味しそうではなく、幸せなシーンがただの一回も出てこないのもよかった。しかし、田舎のモーテルには泊りたくない。少年が何に駆り立てられて残忍な殺人鬼になるのかはいまいち伝わってこず、もう少し深く覗いて見たかった。

  • 映画批評家、東京都立大助教

    須藤健太郎

    映画において心理を担うのは観客であって、登場人物ではない。そのことに触れえただけでも貴重だった。実際、プロム帰りの若者たちを迎えるモーテルの一室で、テッドに聞こえるはずのないスターシップの〈愛はとまらない〉が、「’89年の卒業生へ」というMCの声に導かれて流れ始めたとき、半信半疑で見ていたこの映画をほとんど支持せんばかりに身を乗り出している自分がいた。このくだりがモンタージュ・シークエンスであっさり処理されるのもいい。なお、この監督は次作も悪くない。

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