パーフェクト・ケアの映画専門家レビュー一覧

パーフェクト・ケア

「ゴーン・ガール」のロザムンド・パイクがゴールデン・グローブ賞の主演女優賞を受賞(ミュージカル・コメディ部門)したクライム・サスペンス。“完璧なケア”で裁判所からの信頼も厚い法定後見人のマーラ。だが、その正体は合法的に高齢者の資産を搾り取る悪徳後見人だった。そんなマーラが次の獲物に定めた資産家の老女ジェニファー。身寄りがなく格好の餌食となるはずが、なぜか彼女の背後からロシアン・マフィアが現れる。監督は「アリス・クリードの失踪」のJ・ブレイクソン。「ハンナとその姉妹」「ブロードウェイと銃弾」で、アカデミー助演女優賞を2回受賞したダイアン・ウィーストが老女ジェニファーを演じた。また、「ゲーム・オブ・スローンズ」シリーズのピーター・ディンクレイジ、「ゴジラvsコング」のエイザ・ゴンザレスら個性的な実力派俳優が脇を固める。
  • 米文学・文化研究

    冨塚亮平

    悪事を働く主人公を実にイキイキと演じたロザムンド・パイクは「ゴーン・ガール」の記憶を更新する見事なハマり役で、彼女の活躍ぶりを観るだけでも一見の価値はあるだろう。また、役者の性別や年齢をめぐる通念を覆す現代的な配役を行うことで、かえって不謹慎なネタを遠慮なく投入できるという利点を生かすしたたかさも買いたい。ただ、カモられそうだった老女が意外にも、という転調までは大変楽しめたものの、ひねりが入ってからのパートがいまひとつ盛り上がりに欠けた印象。

  • 日本未公開映画上映・配給団体Gucchi's Free School主宰

    降矢聡

    ロザムンド・パイクの金髪の艶やかな質感とワンレンボブは、その美しく揃い過ぎた毛先が非人間感を漂わせつつ、彼女がただならぬ人物であることをわからせるのに十分すぎるほどに効いてる。また、男に一切屈せず、成功のためには反道義的な仕事もこなす業が深く強い人物として全力でロザムンド・パイクを仕立て上げる映画の志も良い。残念なのは、途中から業の勝負ではなくヘッドロックなどの物理攻撃に頼るところか。ダイアン・ウィーストのヘッドロックは素晴らしいけれど。

  • 文筆業

    八幡橙

    見事な「反転」の映画だ。主人公マーラは言う。「私は子羊じゃない、獰猛な“ファッキン”雌ライオンよ」と。劇中、こんな台詞も。「年寄りだからって善人とは限らない」。そう、これは女性=弱いとか、高齢者=善き人だとか、そういう既成概念をフルスイングでブッ飛ばす快作であり、同時に極めて胸糞悪くもある、実に見事な「反転」の映画なのだ。憎々しいが愛嬌滲むロザムンド・パイクと、眼光鋭いダイアン・ウィースト(最高!)。睨み合う二人をもっと、ずっと見ていたかった。

1 - 3件表示/全3件