スパゲティコード・ラブの映画専門家レビュー一覧

スパゲティコード・ラブ

現代の東京を舞台に、若者たちの物語が複雑に連鎖する群像劇。フードデリバリー配達員の羽田、シンガーソングライターの夢を諦めた心、ノマド生活を送る大森、広告クリエイターの凜……。13人の若者の関係性が次第に明かされ、やがて予想外の結末に向かう。監督は本作が長編デビュー作となる映像クリエイター、丸山健志。出演は、「うみべの女の子」の倉悠貴、「ドライブ・マイ・カー」の三浦透子、「東京リベンジャーズ」の清水尋也。第24回上海国際映画祭GARA部門、第15回ニューヨークJAPAN CUTS Next Generation部門、第40回バンクーバー国際映画祭Gataway部門正式上映作品。
  • 脚本家、映画監督

    井上淳一

    群像劇でしか今を描けないと思う気持ちは痛い程分かる。群像というドーナツの輪に囲まれた空洞にしか、今はないみたいな(?筒井康隆)。しかし本作には「ショート・カッツ」や「カム・アンド・ゴー」にある慎重さや大胆さが決定的に欠けている。96分でサバイバルな登場人物たちに訪れるオチ。上手くまとめられているが故にガラスケースの中の人形劇に見えてしまう。救いも絶望もそんな簡単じゃないはず。本作に限らずだが、良くも悪くもない映画をこの字数で書くのは本当に難しい。

  • 日本経済新聞編集委員

    古賀重樹

    話し方や髪形やガジェットは今風だけど、中身はえらく古臭い青春映画。細切れのこじゃれたCMをつないだような映像に、登場人物の心境吐露のモノローグが時折乗っかるという安易な作りに加えて、それぞれのセリフの自己啓発本のような薄っぺらさにめまいがする。いい俳優を使っていて、一人ひとりが懸命に生きているのはわかるけれど、その背後にある現代社会にはまるで迫れず、ありきたりの風俗描写と紋切り型の東京論しかない。劇中で揶揄されるJポップみたいな映画。

  • 映画評論家

    服部香穂里

    大都会で錯綜する、様々な片想いの行方。その対象は、近くて遠い恋人や、誰のものにもならないアイドル、漠たる不特定多数や、一向に叶わぬ夢だったりもする。あの女優が場をさらう冒頭から、登場人物の多さの割にテンポよく展開し、死にたがりの女の子を食い止めようと空回りする男子高生の微笑ましい奮闘などは目を引くも、どこか既視感を覚える情景が続く。求めても手に入らぬ世界で生きる切実さがもう少し伝われば、絵に描いたような奇跡が醸す幸福感も、もっと活きたのでは。

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