クリスマス・ウォーズの映画専門家レビュー一覧

クリスマス・ウォーズ

メル・ギブソンが武闘派のサンタクロースに扮したアクション・コメディ。サンタクロースのクリスが営むおもちゃ工場が資金難に陥り、やむなく米軍の兵器製造を受託。一方少年ビリーはプレゼントが石炭1個であることに激怒し、サンタクロース抹殺指令を出す。監督は、「スモール・タウン・クライム -回り道の正義-」のイアン&エショムのネルムズ兄弟。サンタクロース抹殺を目論む暗殺者を「アントマン&ワスプ」のウォルトン・ゴギンズが、クリスの妻を「秘密と嘘」のマリアンヌ・ジャン=バプティストが、裕福な少年ビリーを「グッド・ボーイズ」のチャンス・ハーストフィールドが演じる。
  • 映画評論家

    上島春彦

    この映画は一切の情報なく見るのがいい。30分程度でコンセプトが完全に理解されると、そのあたりで原題「ファットマン」と発音される仕掛け。原題はサンタさんのこと。それにしてもファミリー・ムーヴィー極悪版という前提が凄い。つまりお子様向きじゃない聖夜企画。善人がガンガン射殺され、悪には最後まで反省心もなし。軍事産業で成り立っている国家ならではの一部設定に疑問を呈する方もあろう。他人のクリスマスプレゼントを蒐集する殺し屋、という説話的細部に痺れる。

  • 映画執筆家

    児玉美月

    成功しているのは、何をしても死ななそうな剛健なメル・ギブソンとかつてのジャック・ニコルソンを彷彿とさせるサイコなウォルトン・ゴギンズのキャスティングくらいで、凡庸なショットが延々と続いた後に呆気なく終わってしまう。物語を駆動させるために性根の悪い子供を中心に据えておきながら、暴力による恐怖支配が循環していくだけかのような結末はブラックジョークの体もなしておらずただ後味が悪い。妻役に黒人女性をあてているのは、ギブソンのレイシズムを踏まえてなのか。

  • 映画監督

    宮崎大祐

    てっきり「ホーム・アローン」のようなものを想像していたら、ペイバック・ノワールの快作であった。万人にとっての善と思われる行為が万人ではなくあくまで多数の幸福を生む行為にすぎず、そこに含まれなかったものたちのルサンチマンは時にテロリズムとして噴出するという現代の宿痾。アメリカ軍に手を貸すことでどうにか糊口をしのいでいるしょぼくれたサンタクロースがそれを全身で受け止める。それにしてもメル・ギブソンが出演している最近のインディーズ映画は傑作揃いだ。

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