プリテンダーズの映画専門家レビュー一覧

  • 映画・音楽ジャーナリスト

    宇野維正

    今年公開された作品だと「スプリー」や「メインストリーム」など、YouTuberの自己承認欲求というのは東西問わずタイムリーな題材のようだが、「映像を撮ることについての映像」という入れ子構造になるからだろうか、どうしたって不快な主人公になってしまうからだろうか、上手くいった例を見たことがない。本作はそれ以前の問題として、監督の持説を代弁させたような稚拙な台詞の数々にうんざり。YouTubeの台頭を待たずに、日本では映画が表現のハードルをとっくに下げている。

  • 映画評論家

    北川れい子

    SNSやユーチューバーの暴走を描いた映画は世界的な流行で、珍しくもなんともないが、熊坂監督自身のオリジナル脚本による本作、見る前に飛ぶという若い世代の特権と、その危うさに焦点を当て、かなり小気味いい作品だ。集団やシステムにまったく馴染まない休学中の女子高生が、ひょんなことから思いついたのは、善意のフィクションをSNSに流し世界を変えること。口達者な彼女の言動は未熟なりに説得力があり、“引きこ森”なる造語も痛快。演じる小野花梨の天衣無縫ぶりに感心。

  • 映画文筆系フリーライター

    千浦僚

    本作ラストには、DaiGoが抱樸で研修しようとしたときまたそこでも撮影をしようとしていたのに似たものがあり、多分主人公は反省できないがそれもまた良し。道具立ての新しさとは別に罪と罰対応が古典的で、その普遍は好きだ。「暴行儀式」(80年、監督根岸吉太郎、脚本荒井晴彦)のラスト、若者らが“僕たちは人を殺した”と叫びつつ通りを練り歩く場面を観たとき、ソーニャによるラスコーリニコフへの“広場に行って改悛せよ”は未だ有効だと思ったが、いまも有効かと。

1 - 3件表示/全3件

今日は映画何の日?

注目記事