明け方の若者たちの映画専門家レビュー一覧

明け方の若者たち

10~20 代の圧倒的支持を獲得したWEBライター、カツセマサヒコの同名の青春恋愛小説を映画化。恋愛や仕事、夢と現実の間でもがく若者の姿をリアルに描き出す。主人公の<僕>を北村匠海、<彼女>を黒島結菜。<尚人>を井上祐貴が演じ、「脱脱脱脱17」の新鋭、松本花奈が監督。脚本は「デイアンドナイト」の小寺和久。主題歌はロックバンド・マカロニえんぴつ。
  • 脚本家、映画監督

    井上淳一

    今を描きながら今がどこにもない映画がまたひとつ。ままならない人生をそれでも生きる。それが若者のリアルだとしても小市民肯定映画を23歳が撮る悲劇。演出も作劇もどこか古臭い。せめてドラマとして面白くして。恋人が人妻だと半分過ぎて客にバラす下品さ。その葛藤こそ描かないと。ホリプロ、井樫彩とか若い監督を起用するのはいいが、ちゃんとリードしないと潰すだけ。まずは原作選びから。バスローブ着たまま最後のセックスさせないで。みんな、もっとマジメに映画作ろうぜ。

  • 日本経済新聞編集委員

    古賀重樹

    こちらは大学院を出たての若い妻が夫の海外赴任中に年下の男と恋愛する話。こういう事例も増えたと思うし、「二番目でいいから」という男の煩悶が切ない。これを青春映画として描き、中盤までネタを明かさないところも新味がある。ただ大学や会社の退屈さがいかにも紋切り型で、おのずと明け方まで飲み続ける若者たちの不平不満も紋切り型になる。明大前や下北沢や高円寺あたりを舞台にした青春映画がこのごろやたら多いけれど、ただそこらで撮れば若者が生々しく映るわけではない。

  • 映画評論家

    服部香穂里

    始まる時点で終わりを視野に、流れる歳月を描く恋愛劇が相次ぐ。制約なしでは男女の情愛さえ成立させづらい、不自由な息苦しさを覚える時代の反映か。本作でも、常に漂う別れの予感の正体が中盤で明かされるが、それを境に「ありがとう」から「ごめんね」に口癖が転じる“彼女”にも弁明の機会を与えなければ、“僕”の当初の見立て=あざとい女疑惑も払拭されず、もやっと感が残る。一人称の小説ならいざ知らず、黒島結菜という個性が一皮むけて輝く映画にしたのに、勿体なく思う。

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