恋する寄生虫の映画専門家レビュー一覧

恋する寄生虫

林遣都と小松菜奈が初共演でダブル主演を務めたラブストーリー。極度の潔癖症で、人と関われない青年・高坂賢吾は、視線恐怖症で不登校の高校生・佐薙ひじりと出会う。やがて高坂は、弱さを隠すために露悪的な態度を取る佐薙に共感、2人は恋に落ちるが……。「かそけきサンカヨウ」の井浦新、「マスカレード・ナイト」の石橋凌が共演。三秋縋のベストセラー小説を原案に、「武士の献立」の山室有紀子が脚本を執筆。大河ドラマ『青天を衝け』のタイトルバック映像で注目を集める柿本ケンサクが監督を務めた。
  • 映画・音楽ジャーナリスト

    宇野維正

    ストーリーや台詞の稚拙さや幼稚さは「ラノベ」に分類される原作由来のものなのだろうが、もちろん本作の責任はその映画化企画を立ち上げた製作サイドにある。20代半ばになっても延々と女子高生を演じ続けている小松菜奈の不遇にも、現在の国内ティーンムービーの作り手たちの怠慢さが凝縮されている。唐突な豊島園やヴィーナスフォートのロケーションは、失われゆく東京の風景を映像として残しておきたいということなのか。でも、肝心の作品が観客の記憶に残らなくては意味がない。

  • 映画評論家

    北川れい子

    孤独に心の傷、不登校に厭世観といったテーマは、現代の青春映画の定番のひとつになっているが、病的なほど潔癖症の青年と、視線恐怖症の女子高生が、第三者が目論んだヤラセとは知らずに出会い、いつしか互いに惹かれ合うという本作、キャラを複雑にしている割には自意識の強い男女のボーイミーツガールものと大差なく、肩すかしもいいところ。どちらの親も自死をしているという設定も作りすぎで、簡単に親たちを死なせるな! 映像が妙に重苦しいのも虚仮脅しの印象を強めている。

  • 映画文筆系フリーライター

    千浦僚

    小松菜奈が現代を代表する三白眼美人女優なのが効いている。視線の強いひとが語る視線恐怖という説得力。林遣都演じる潔癖症の青年の佇まいは、まさにいまのキャラという感じ。嘘か真か一時期ツイッターで多くリツイ&いいねされていたコロナ禍下を象徴するような電車内での若者会話スケッチ、「キスしたかったけどどのタイミングでマスク外すのかわかんなくて」がライトナウに恋しているヤングの防備解除と触れ合いを考えさせる傑作だったように、本作も観るならいまの恋愛譚。

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