Our Friend アワー・フレンドの映画専門家レビュー一覧

Our Friend アワー・フレンド

『Esquire』誌に掲載され、全米雑誌大賞を受賞したエッセイを映画化。ジャーナリストの夫と末期がんを宣告された妻、その闘病を支えた友人との日々が10数年を行き来しつつ描かれる。競争、効率、自助に疲れた社会に対して、人は助けあえるというメッセージが込められている。監督は水族館のシャチとショービジネスについて描いたドキュメンタリー映画「BLACKFISH(原題)」で英国アカデミー賞ノミネートを果たしたガブリエラ・カウパースウェイト。マット役には「マンチェスター・バイ・ザ・シー」でアカデミー賞主演男優賞を受賞したケイシー・アフレック。妻ニコル役には「フィフティ・シェイズ」シリーズで一躍注目を浴び、「サスペリア」など幅広い作品で活躍するダコタ・ジョンソン。そして二人の親友デイン役には多くのコメディ作品に出演し、幅広い演技に定評のある「ザ・マペッツ」のジェイソン・シーゲル。実力派俳優3人の演技が心に沁みわたるヒューマンドラマだ。
  • 映画監督/脚本家

    いまおかしんじ

    風呂場で体を洗うシーン。末期癌のヒロインの背中が異様に美しかった。人が死ぬことや生きていくことについて、あれこれ考えた。不満なのは、難病ものにつきまとう真面目さだ。お涙頂戴のシーンは絶妙に省略していたり、時制が行ったり来たりする構成にしたりと色々工夫されているが、やっぱり辛気臭い。ヒロインに付き合う男二人のオタオタぶりは、好感が持てる。二人の芝居を見ているとホッとする。うまくいかないことをどういう風に切り抜けていくのか? そこが見所と思った。

  • 文筆家/女優

    睡蓮みどり

    癌宣告を受けた妻とその家族、彼らを支える親友の人間関係と受け入れ方を丁寧に描く終わりの始まりの物語。宣告前と後をいったりきたりするなど、時系列をわざわざ複雑にすることが何か仕掛けになっているとは思えなかった。はたから見たらなぜそこまで?と思うほど献身的に友人夫婦を支えるデインの温かな存在が最後まで優しい。闘病ものがどうしても苦手というのもあるのだが、新作としての驚きはない。ジャーナリストで妻を支える夫役のケイシー・アフレックは特によかった。

  • 映画批評家、東京都立大助教

    須藤健太郎

    カメラは「関係」を捉えられない。関係は事物ではなく、そのかぎりで描写の対象にならないからだ。またカメラは「変化」を捉えられない。変化は持続の中で生じる「変容」と異なり、時間軸を穿つ点だからだ。本作がショットの切り替えに自覚的なのはそれゆえである。なぜ車内の会話シーンが車外からの窓越しで終わるのか。デインが去ったあと、なぜマットは°90別の角度から捉え直されるのか。ニコルが息を引き取り、なぜドア越しのショットへと移っていくのか。理由は明らかだろう。

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