シュシュシュの娘の映画専門家レビュー一覧
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脚本家、映画監督
井上淳一
SAVEtheCINEMAの時に「作り手のミニシアターへの一番の支援は入る映画を作ることだ」と何人もから言われた。しかし、それが一番難しい。その壁を入江は10年ぶりの自主映画で易々と乗り越えた。だが、やはりこちらも安い嘘が気になる。家を荒らし祖父を暴行したら、立派な犯罪でしょ。なのに警察は民事に介入しないと言う。それが今の日本の縮図だとしても限度がある。一事が万事。自主映画だからこそ、安上がりしないで欲しかった。ミニシアター愛に★ひとつプラス。入って欲しい。
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日本経済新聞編集委員
古賀重樹
入江悠監督の映画のリアリティーはつくづく不思議なリアリティーだ。移民排斥も公文書改ざんもデータ争奪戦もほとんど戯画的、半ば荒唐無稽に描かれるが、その場に漂うゆるゆるとした空気がえらく生々しい。市職員や自警団の悪意のないニヤニヤ笑いとか、目立たない娘が庭で一人でやる体操とか。ああ、これがあの送電線があるサイタマの町の空気なのだ。そしてそれは今の日本のあらゆる社会の隅々にまで満ち満ちた同調圧力であり、そこからのささやかにして断固たる逸脱なのだ。
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