その日、カレーライスができるまでの映画専門家レビュー一覧

その日、カレーライスができるまで

監督としても活動する齊藤工が企画・プロデュース、リリー・フランキーがワンシチュエーションでほぼ一人芝居をする人間ドラマ。三日後に迫った妻の誕生日に食べる特製カレーを仕込む男。愛聴するラジオ番組に向けて、三日目のカレーについてメールを綴る。監督は、齊藤工が企画・プロデュース・出演した「MANRIKI」を手がけた清水康彦。齊藤工の初監督短編「半分ノ世界」以降数々の作品で組む金沢知樹が劇団スーパー・エキセントリック・シアターの野添義弘還暦記念公演に向け書き下ろした戯曲を原案にしている。
  • 脚本家、映画監督

    井上淳一

    まさか本当に「カレーライスができるまで」の映画だとは。子供の死から立ち直れず、妻とも別居した男。3日後の妻の誕生日に向けてカレーを作り始める。やめてくれと思う。喪失や救済や再生を便利使いして消費するのは。開始5分ですべて読める。52分が長い。中篇で抑制の効いたいい話でいい役者使ってと企画会議が目に浮かぶ。映画をナメてるのか。それなら長篇で堂々とやれよ。この程度の映画なら作らないで欲しい。あと、ルーは火を止めてから入れるので。それくらいちゃんとやってね。

  • 日本経済新聞編集委員

    古賀重樹

    幼い息子を難病で亡くし、そのために妻にも去られた男の喪失感と無力感を、アパートで独りカレーを作るリリー・フランキーが表現する。外は雨が降りしきり、小さな部屋の中ではラジオと生活音が聴こえるだけ。そんなミニマルな一人芝居として始まり、次第に家族の事情が明らかになる。序盤はちょっと期待をもたせるが、中盤から感情をあおる音楽が流れ始め、息子の写真が倒れるようなオカルト現象まで起きて、興覚め。男が涙を流すころには、すっかり凡庸なメロドラマに着地する。

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