グレート・インディアン・キッチンの映画専門家レビュー一覧

グレート・インディアン・キッチン

若い女性が家父長制とミソジニーに直面して味わうフラストレーションをドキュメンタリー風に描いたドラマ。由緒ある家柄の夫に嫁いだ、中東育ちでモダンな生活様式に馴染んだ妻。彼女は次第に、台所と寝室で男たちに奉仕するだけの生活に疑問を持ち始める。伝統的ヒンドゥー社会での“穢れ”観にもメスを入れ、多くの議論を巻き起こした話題作。出演は、「ジャパン・ロボット」のスラージ・ヴェニャーラムード。インディアンムービーウィーク2021で上映。
  • 映画監督/脚本家

    いまおかしんじ

    延々と料理する描写が続く。全然終わらない。家事ってメッチャ大変。追いまくられるヒロインが健気すぎて涙が出る。対する男どもはことごとくポンコツだ。旦那のお父さんが笑顔で、釜で炊いたご飯がいいとか、洗濯は手洗いがいいとか言っているのを聞いて、めっちゃムカついた。インドの主婦がどんなに不当に扱われているか、描写に強烈なルサンチマンがある。ユーモアなんて入る余地もない。迫力があって面白かったけど、見ているのがツラかった。意外と家事は楽しいよ。

  • 文筆家/女優

    唾蓮みどり

    カレー美味しそ?などと気軽にみていると突然後頭部を殴られるような痛みが走る。ひたすら料理し続け、淡々と家事をこなす女性の姿を追っているかと思うと、感謝もなく当然のこととしてそこにドーンと暮らす男性たちの残酷さがもくもくと立ち込める。悪気もなくドヤ顔でヨガをする夫が本当に腹立たしい。監督も結婚してから特に意識が変わったそう。この台所風景があくまでも特別な世界の特殊な事情ではなく、どこにでもあるものとして描こうとしているのが窺える。

  • 映画批評家、東京都立大助教

    須藤健太郎

    最初に歌が流れ出して、この声、このリズム、この歌詞、これはいい映画に違いないと信じた。あの半裸の家長も息子も悪意がないのがなおさらに不快で、とにかく早く全員まとめてやっつけてくれと願うばかりだった。反抗のきっかけが携帯で見る動画なので、この映画もそういう効果を狙ったパンフレ・フェミニスト。もちろんインドに固有の歴史的・社会的な背景はあるが、見た人それぞれがそれぞれの場所で立ち上がることを促している。「自分が飲む水くらい自分で準備しろ」。

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