かばの映画専門家レビュー一覧

かば

大阪西成区の中学校で、様々な葛藤を抱えながら自分たちの生き方を模索する生徒たちと正面から向き合った実在の教師をモデルに映画化。1985年、荒んだ学校生活を送る子供たちに手を焼く蒲益男ら教師たち。そんなある日、臨時教員として若い加藤が赴任してくる。主人公・蒲を自身も大阪出身である「幸福な囚人」などの山中アラタが演じる。監督は「傘の下」の川本貴弘。
  • フリーライター

    須永貴子

    「伝説の教師もの」だが、主人公をスーパーヒーローとしてではなく、教師という仕事に真摯に向き合う普通の人間として(なのにとてつもなく魅力的に)描いている。その結果、彼が関わるキャラクター(生徒、保護者、同僚ら)と、それぞれの人生が粒立つ群像劇として、大成功している。西成、大正、鶴橋といった土地とその風景は、本作における裏の主役。土地や出自、社会的属性に縛られた人々のリアルな日常の描写と、希望を込めたラストに、フィクションの力を感じた。

  • 脚本家、プロデューサー、大阪芸術大学教授

    山田耕大

    酒に溺れ、ギャンブルで身を滅ぼし、子どもを無視するどころか子どもからさえ金を奪う。問題の親たちは汲めども尽きず、日本中に溢れている。大人はなんで大人になれないんだろう。大人を大人になれなくする何かが日本にはあるのだろうか。子供たちはつらい。希望などまるでない。目の前の現状をなんとか乗り切るのが精いっぱい。教師だけがかれらの救いだ。それにしてもこんな教師たちが世の中にいるんだろうか。いてほしい。子どもたちを救ってほしい。そう思うと、涙がにじむ。

  • 映画評論家

    吉田広明

    部落や在日を多く抱える西成という地区の特殊性はあるが、不良の生徒たちが実は家庭環境や社会の歪みを被っていながらも一生懸命生きようとしていること、またいい加減のように見える教師たちも、彼らと真っ向から向き合っていることが判明し、共に学び、変わってゆくというよくある物語。型の力で見てはいられるが、典型を出ることがなく、すべてが予想の範疇である。実話だそうだから時代背景が古いのはしょうがないが、だからと言って構造や語り口が古臭くていいわけでもない。

1 - 3件表示/全3件

今日は映画何の日?

注目記事