かそけきサンカヨウの映画専門家レビュー一覧
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脚本家、映画監督
井上淳一
今泉力哉は役者を魅力的に撮るのが本当に上手い。だから誤魔化されてしまうが、脚本の弱さは毎回いかんともし難い。継母をお母さんと呼ぶまで1時間。その後55分の男友達は蛇足。二部構成にしないで交互にやらないと。皆、相手のことを思いやれる優しいお利口さんばかり。これじゃ生まれるドラマも生まれない。原作にはもっと悪意が隠されている。この薄っぺらな感じがウケているのか。人間が隠している本質を描かないと映画史には残れない。撮り過ぎて雑になってないかと老婆心ながら。
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日本経済新聞編集委員
古賀重樹
窪美澄と今泉力哉。欠落感を抱えた人々の繊細な心理劇という意味では相通じるのだろうが、この作品を見る限りはむしろ相性の悪さを感じた。新しい母と実の母の間で揺れる少女という繰り返し作られてきた物語に対する、窪なりのアプローチが確固としていて、今泉の持ち味であるどこに転ぶかわからない対話劇のスリルが削がれてしまっている。結果として、人物の陰の部分を打ち消し合い、予定調和的な少女の成長物語に収斂していく。個々の俳優は生き生きしているだけに残念。
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映画評論家
服部香穂里
陽と陸。互いに対照的で不可欠でもある存在の名をもつ“好き”同士の幼なじみが、恋と友情の間で揺れる姿を見つめる。うまく表現できなくても懸命に伝えようともがく男女の、もやっとした心情の機微を丹念に掬いあげる手腕は、オファーの途切れぬ今泉力哉監督の真骨頂。それぞれに複雑な家庭で、近しいゆえに壊れやすくもある関係性の中、言葉を大切に選びながら、ちびっ子も高校生も彼らの親も、少しずつ成長し合っていく。さりげなくも深い感慨に、今泉監督の円熟味が増した感も。
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