恋の病 潔癖なふたりのビフォーアフターの映画専門家レビュー一覧

恋の病 潔癖なふたりのビフォーアフター

台湾の金馬奨6部門候補の他、各国の映画祭で高評価を得た異色のラブストーリー。重度の潔癖症の青年ボーチンは、外出時は防塵服に手袋とマスク着用の完全武装。周囲からは変わり者と見られていたが、ある日、同じ潔癖症の女性ジンと運命的な出会いを果たす。出演は「オーバー・エベレスト 陰謀の氷壁」のリン・ボーホン、「黒衣の刺客」のニッキー・シエ。リャオ・ミンイーの監督デビュー作。
  • 米文学・文化研究

    冨塚亮平

    潔癖症や窃盗症といった強迫性障害を恋愛と絡める設定は斬新で、扱い方次第で独創的な作品に結実する可能性は十分にあったはずだ。だが、病からの治癒がカップルの運命的な関係を変質させていく展開は、病を異常なものとして健康・普通と対立させる規範的な発想から結局は逃れられていない。治癒を契機としてSNS的な正方形の画面がドラン「マミー」を思わせる形で横に広がる陳腐な仕掛けも含め、単に見かけ上の物珍しさから病を生きることを主題とした可能性を疑わざるを得ない。

  • 日本未公開映画上映・配給団体Gucchi's Free School主宰

    降矢聡

    前半の人工性と無垢さが共存する風変わりなカップルと画面構成は、これは作り物だと観客に絶えず語りかけているにもかかわらず感動させる「クウォーキー」というコメディ映画群を想起させ、いささか既視感はあるものの巧妙に風変わりな世界を作り上げている。さらにはその世界をカップルの片方が“普通”になることで瓦解させる展開は気が効いているが、瓦解の仕方それ自体がとても律儀な構成に感じられるため、結局はお行儀の良い世界にとどまってはいるように見えてしまう。

  • 文筆業

    八幡橙

    強迫神経症の二人が出会って恋に落ちる、一風変わったラブコメディ……と思いきや、まさかの大衝撃作。全篇iPhoneで撮影されており、新鋭リャオ・ミンイーの斬新な試み溢れる意欲作であることは確かだが、中盤以降、そんな範疇を軽々超えてゆく。主人公の病気が治り、正方形だった画面が横長に拡がった瞬間、世界は少女漫画からドロドロした実録レディコミの世界へ。人間所詮自分が可愛い。愛という錯覚を巡る「エゴ」の正体に堂々切り込む重すぎる急展開に、鑑賞後、しばし茫然。

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