明日に向かって笑え!の映画専門家レビュー一覧

明日に向かって笑え!

2001年のアルゼンチン金融危機を背景にした、庶民たちによる痛快リベンジ劇。寂れた小さな田舎町。預金を凍結されたうえ、銀行と弁護士に金を騙し取られた元サッカー選手のフェルミンたちは、元の暮らしと夢を勝ち獲るため、奇想天外な財産奪還作戦を敢行する。出演は「人生スイッチ」のリカルド・ダリン、「4×4 殺人四駆」のルイス・ブランドーニ、「永遠に僕のもの」のチノ・ダリン。監督は『コブリック大佐の決断』のセバスティアン・ボレンステイン。
  • 非建築家、美術家、映画評論、ドラァグクイーン、アーティスト

    ヴィヴィアン佐藤

    「おしゃれ泥棒」のアイデアが登場するが、こちらは全くもっておしゃれではない。2001年という時代設定は、高額現金がギリギリ扱われていた時代か。物理的現金そのものが出現しなければ、強奪という行為は絵にならない。正義に基づく復讐劇は、義賊という形で古今東西古来から存在する。今作が特徴的なのは、妻を失った元サッカー選手はじめ、第二第三の人生を生きる老人たちに未来があるところ。人生は思ったより長く、夢や希望、欲望を持ち続けることが楽しく描かれている。

  • フリーライター

    藤木TDC

    どの国にもジジイ映画の需要はあるようで、地球の裏側アルゼンチンからやって来た三匹ならぬ“七人のおっさん”はR・ダリン、D・アラオスら名優の渋い演技見物には悪くない。ただいかんせんテンポがあまりに緩慢だし斬新なアイデアやおっさん各々の特技の見せ場があるでもなく、完璧に予測できる平板展開と伏線にならない端役のどうでもいい余話に延々つき合うのは辛いし笑えない。アルゼンチンじゃこんな呑気な映画を2019年の経済危機まっただ中に公開して皆笑ったのか?

  • 映画評論家

    真魚八重子

    ファーストシーンのフラッシュフォワードが必要だったのか疑問。なけなしの金を集めていく順調そうなオープニングは、この不穏な未来の匂わせによって、すべてが起承転結の転待ちになる。不幸の訪れをほぼ知っている状態なので、結果的に転までは意外性のない単調な演出が続いてしまうのだ。ただ定型から出ないシークエンスの連続ではあるが、俳優陣の雰囲気や個性は味がある。理不尽な不幸の畳み掛けがかなり強烈なため、私腹を肥やす上級国民への復讐劇は慰撫に感じる。

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