星空のむこうの国(2021)の映画専門家レビュー一覧

星空のむこうの国(2021)

1986年に公開された有森也実主演のファンタジーを、監督の小中和哉自身がリメイク。毎夜、同じ少女が現れる夢を見続ける高校生・昭雄の前にある日、その少女・理沙が現れる。理沙はある約束を果たすため、別の世界から昭雄を呼び続けていたのだが……。主演は「蜜蜂と遠雷」の鈴鹿央士。
  • 映画評論家

    北川れい子

    むろん私も小中監督の商業映画デビュー作は公開時に観ているが、80年代前後は日本映画の大変革期にあり、斬新な自主映画や作家性の強い娯楽作品が次々と登場、そちらの方ばかりに気が行って、少年少女が二つの世界ですれ違うという話、どうもスッキリしなかった。でそのセルフリメイク、今度は違う戸惑いが。あら、あの少年と少女、そして監督はまだパラレルワ-ルドから抜け出せてなかったのね。ひょっとしたらこれも宇宙のいたずら? いやこれは冗談。若い方、ぜひ体験を。

  • 編集者、ライター

    佐野亨

    映画少年の面影あざやかな小中和哉監督が少年少女の「時」を初々しく刻み込んだオリジナル版から35年。このリメイク版における監督の視線には、親の世代としての慈愛と達観が見て取れる(劇中でそれを象徴する存在がヒロインの母親を演じる有森也実だろう)。その大人の視線があればこそ、鈴鹿央士、秋田汐梨ら現在の少年少女の「時」が、ノスタルジーの枷を逃れ、いきいきと迸る。撮影(高間賢治)もVFXも特別斬新なものはないが、「時」に対する堅実さが品格をうんでいる。

  • 詩人、映画監督

    福間健二

    自作のリメイク。小中監督の作戦、どうだったのか。評者は未見の35年前の作品でヒロイン理沙役の有森也実が、ここでは秋田汐梨演じる理沙の母親役。そんな作品を撮るふしぎさ。それが他作品で変わった子を演じてきた秋田と昭雄役の鈴鹿央士のオーラに作用するのを期待したが、見えてこない。パラレルワールドに元の世界での意識を持続させて入る昭雄の心理も、あまり画に出ない。CGのシリウス流星群以上に人と風景と言葉に誘発するものがあれば、ラスト、もっとときめいたはずだ。

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