Bittersandの映画専門家レビュー一覧

Bittersand

目を背けてきた暗い過去に決着をつけようとする男女の姿を描く青春ドラマ。ただ何となく毎日を過ごす吉原暁人は、ある日、高校時代密かに想いを寄せていた石川絵莉子と偶然再会する。過去を全て拒絶する彼女を目の当たりにして、暁人はある計画を目論むが……。出演は「NO CALL NO LIFE」の井上祐貴、「アイネクライネナハトムジーク」の萩原利久、「記憶の技法」の木下彩音。「ステップ」などの助監督を務めてきた杉岡知哉による長編監督デビュー作。
  • 映画評論家

    北川れい子

    以前、某脚本家が、シナリオ教室の生徒たちが書く脚本の多くが高校や大学を出て数年後という同窓会ものだ、と苦笑いをしていたが、新人監督(脚本も)による本作もその路線。ただこの作品の場合、脚本は若手俳優たちの集団売り出し作戦の方便として使われている節も。いやそうとしか思えないほど、どのキャラも目立つし、賑々しい。高3時に起きたある事件を、7年後のクラス会で検証し直すというのだが、回想で再現されるその事件が中学生レベル、観ていてナサケなかった。

  • 編集者、ライター

    佐野亨

    イキのいい若手俳優たちによって、普遍的な青春の1ページを描き出した青空系映画を装いつつ、その普遍性の掘り下げがなかなかに辛辣。単にシチュエーションとして残酷というだけでなく、思春期男子の女子に対する性的な視線の暴力性、個人に対する学級集団の加害性など、実際に多くの人間が思い当たりながら向き合いきれない心の問題に踏み込んでいく。脚本も手がけた杉岡知哉監督、肚が据わっている。ただ、随所で安易に感情誘導的な芝居や音楽の付け方が目立つ点が惜しい。

  • 詩人、映画監督

    福間健二

    開巻早々で、出てくる人物、だれも好きになれないと感じた。過去の高校時代にフケ顔の生徒が並ぶのは我慢するとしても、こんな傷つけあいを許してしまう愚かさやイヤシイ性格はだれでもかなりうまく演じられるのが見えてきて、どこまで元をたどって抗議すべきなのか、途方に暮れた。杉岡監督、後半40分の同窓会の「真実を暴こう!」で問題を片付けられると思ったのだろうか。そこで作られることになる、撮れてもいないような作品内「映画」のいいかげんさ。どう考えても、粗雑。

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