20歳のソウルの映画専門家レビュー一覧

20歳のソウル

千葉県船橋市立船橋高等学校の応援曲として代々受け継がれている「市船 soul」を作曲した青年の実話を映画化。癌に侵されて20歳でその短い人生を閉じた浅野大義が音楽に傾けた熱い情熱と、吹奏楽部の仲間たちとの強い絆を、丁寧に描いた希望と感動の物語。主演の神尾楓珠は3カ月の猛特訓を経てトロンボーンを習得し、大義役を熱演した。さらに本作が映画初出演となった佐野晶哉(A ぇ! group/関西ジャニーズ Jr.)、福本莉子ら今話題のフレッシュな顔ぶれと、尾野真千子、佐藤浩市らベテラン俳優がアンサンブルを奏でた。監督は『特命係長 只野仁』シリーズ、『陽はまた昇る』などのドラマを数多く手がけた秋山純。原作者の中井由梨子が脚本も担当した。
  • 脚本家、映画監督

    井上淳一

    誰のために、誰に向かって、こういう映画は作られるのだろう。誰が何の勝算があって、この企画を通し、挿話を団子の串刺しにした平坦な脚本にGOサインを出したのだろう。誰がテレビのNGのような演出しか出来ない監督を起用したのだろう。佐藤浩市や尾野真千子は何をいいと思って出演を決めたのだろう。感動の実話に縛られたのか。それ以前か。違う意味で泣きたくなった。今、実話の映画化に取り組んでいる自分にとって他人事ではない。こんな映画を作ってしまったら、打首獄門だ。

  • 日本経済新聞編集委員

    古賀重樹

    吹奏楽にかけた短い人生をうたいあげる青春映画。実話に基づく。前半は学園もの、後半は難病もの。わかりやすくできている。秀逸なのは校舎の屋上にずらりと並んだ高校生たちが踊るYOSAKOIソーラン。モデルとなった市立船橋高校とその生徒、卒業生の協力がないとできないシーンで、さすがに迫力がある。そういう意味でのリアリティーはあって、この映画の魅力は演奏会も含めて高校生のパフォーマンスの再現に尽きる。紋切り型のテレビ的演出をどうこう言うのは野暮か。

  • 映画評論家

    服部香穂里

    20歳で夭折した青年の実話。何かと身構える題材ながら、劇中いわく“昭和の青春”を、時代錯誤と恐れず熱く全力で実践する前半が活き、それに裏打ちされた後半も、深刻な展開が続く中にもポジティブさが一貫して脈打つ。死は生の一部で、逆もまた真なりと自ずと示すことで、彼の年齢を超えてしまった者にも、涙を流す後ろめたさが軽減される。佐藤浩市と尾野真千子の胸に迫る嗚咽が、陽のあたる人気者でなくても自分を想ってくれる誰かがどこかにいると、切実に訴えかけてくる。

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