ライトハウスの映画専門家レビュー一覧

ライトハウス

第72回カンヌ国際映画祭で国際映画批評家連盟賞を受賞したA24製作、「ウィッチ」のロバート・エガース監督によるスリラー。謎めいた孤島にやって来た2人の灯台守が外界から遮断され、狂気と幻想に侵されていくさまをモノクロ、スタンダードサイズで映し出す。出演は「永遠の門 ゴッホの見た未来」のウィレム・デフォー、「TENET テネット」のロバート・パティンソン。第92回アカデミー賞撮影賞ノミネート。
  • 非建築家、美術家、映画評論、ドラァグクイーン、アーティスト

    ヴィヴィアン佐藤

    移動しない密室で展開される出来事は、「ここ」でも「いま」でもない旅に二人を連れ出すロードムービーだ。照射するのは海上ではなく二人の心の陰部であり、目印は船舶のためではなく二人の理性の基準地だ。「日誌」とは出来事の偽りの痕跡であり、「時計」とは行動の自己弁護だ。「日誌」を破り、「時計」を壊し、人間は初めて自由を獲得する。周囲に拡がる深淵には不可視のリヴァイアサンが姿を現す。そこは光という神の祭壇でもあり、司祭のための天国と地獄の入り口でもあった。

  • フリーライター

    藤木TDC

    D・リンチが登場した時に近い高揚と動悸。主演二男優による大げさな眼力演技合戦はわざわざ低感度フィルムで撮影した白黒映像にフィット、照明設計やノイズサウンドも完璧に効果を示し、発掘された旧作を見るように古色蒼然を楽しめる。男ふたりの密室劇は結末が歴然だし、終盤の泥酔場面がくどい、脚本構成が同じ監督の前作「ウイッチ」に似すぎ等々ツッコミどころも散見するけれど悪趣味な低予算スリラー好きに充分お薦めできる。雨の日、薄汚ない映画館でひとり観たい怪作。

  • 映画評論家

    真魚八重子

    そりが合わないベテランと新人の灯台守の男2人が繰り返す、口論のための口論。モノクロームの美意識が強い映像。シュールな夢想と人を恐れない不気味な海鳥。マヤ・デレンの実験映画のようで、ただ好きだなと思う。難解でもないし狂気が深まっていくテンポもスムーズで、前情報で受けるとっつきにくさはない。クラシカルな夢の怪物も絶妙な塩梅で色気のあるカットになっている。趣味に訴えかける作風でメッセージ性はあまりないので、個人の嗜好で合う合わないは判断して頂きたい。

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