クー!キン・ザ・ザの映画専門家レビュー一覧

クー!キン・ザ・ザ

ソ連製カルトSF「不思議惑星キン・ザ・ザ」を、監督のゲオルギー・ダネリヤ自身がアニメーション映画化。チェリストのチジョフとDJ志望の青年トリクは、モスクワの大通りで宇宙人と遭遇し、キン・ザ・ザ星雲の惑星プリュクにワープしてしまうが……。ダネリヤは本作完成後、88歳で急逝し、これが遺作となった。タチアナ・イリーナが共同監督を務める。
  • 映画評論家

    小野寺系

    「ツイン・ピークス The Return」「シン・エヴァンゲリオン劇場版」などと同様、本作もまた監督自身が過去の代表作にもう一度挑む企画。主人公たちの設定が改変されていたり、アニメーションだからこその、より自由なSF世界を表現している部分は面白い。とはいえ、やはりオリジナルの実写作品に存在したビジュアルショックや、妙なリアリティが醸し出す面白おかしさと比較するとパワーダウンしていることは否めない。その境地に達するには、革新的な手法が必要なはず。

  • 映画評論家

    きさらぎ尚

    四半世紀以上を経て、自作(実写)を、監督自身の手でアニメ版としてリメイクした珍しいケース。実写版で感じたシュールなSF感は、新登場するテクノロジーによって、今作ではリアル感に変容している。そして主題であった国の政治体制に向ける皮肉な目線は今回も衰えず。いま、一国にとどまらず世界を暗雲で覆う格差と分断を、人種を識別するための識別器や仕草、社会的地位を示す決められたズボンの色などで視覚化したこのアニメは、リメイクによって新しい命を得たのだ。

  • 映画監督、脚本家

    城定秀夫

    社会主義が揺らぐ混乱のさなか製作された実写版と現代のロシアで作られた本作とでは政治的メッセージやアイロニーの方向性が違うのか、あるいは相も変わらずなのか、その辺の議論は難しそうなので置いとくとして、主人公二人の設定や細かいところにちょこちょこアレンジが加えられているとはいえ全体的には原作通りの流れのままタイトな語りでだいぶ分かりやすくなっており、レベルの高いアニメーションになっても貧乏くさい雰囲気はそのままで、キン・ザ・ザファンには必見の一品。

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