劇場版 アーヤと魔女の映画専門家レビュー一覧

劇場版 アーヤと魔女

『ハウルの動く城』のダイアナ・ウィン・ジョーンズの児童小説を原作に、宮崎駿が企画を担当したスタジオジブリ初のフル3DCGアニメ。NHKで放送されたバージョンに新規カットを追加して劇場公開。魔女の家に引き取られた孤児の少女アーヤの奮闘を描く。声の出演は「水上のフライト」の平澤宏々路、「ヤクザと家族 The Family」の寺島しのぶ、「ミッドウェイ」の豊川悦司、「おらおらでひとりいぐも」の濱田岳。監督は「コクリコ坂から」の宮崎吾朗。
  • 映画評論家

    北川れい子

    このアニメの広告チラシに、「単純に面白いと言えるのは、良いことなんです」という宮崎駿のことばが載っている。実際、ハナシの表面だけ観れば、アーヤの人心操縦術の巧みさは、魔法の力がなくても大丈夫に違いない。3D映像も、キャラクターたちのツルンとした表情以外は、背景、小道具など、実写に勝るとも劣らない重量感がある。けれども大人の事情で孤児院に捨てられたアーヤの、その大人側の関係が気になって――。魔女とか魔法で子供受けを狙っているような妙な作品だ。

  • 編集者、ライター

    佐野亨

    「葛藤と成長」がお題目のように唱えられる昨今、この物語の主人公アーヤの葛藤も成長もしない、他者をあやつることで自身の居場所を手に入れようとする姿は、そのまま「不正操作」に満ちた世界への抵抗を意味する。ギリアムの「バンデットQ」を例に出すまでもなく、本来、すぐれたファンタジーとはそのようなものではなかったか。さらにそれを誰よりも運命の不正操作に自覚的であろう宮崎吾朗が撮ったのが興味深い。気楽に観られる小品だが、たしかなアクチュアリティをそなえた一作。

  • 詩人、映画監督

    福間健二

    あっという間に終わった。退屈もしなかったことになるが、話の筋として、そうなることになっているからそうなると感じさせることばかりで、ハラハラしない。アーヤが「子どもの家」に受け入れられる。そこを出てベラ・ヤーガとマンドレイクの家に引きとられる。どちらも、おこりうる抵抗が封じられている。自分の思い通りにできるアーヤ。魔法もいらない気がする。吾朗監督、日本のアニメのここまでの達成から抜きたいものがあるのか。CGによる画、いつのまにか鮮度を失っていた。

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