きみが死んだあとでの映画専門家レビュー一覧
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映画評論家
北川れい子
ガロ、少年マガジン、朝日ジャーナルを、みんな回し読みしていた、と語るのは詩人の佐々木幹郎。このドキュメンタリーのタイトルにある“きみ”こと山﨑博昭と高校が同じで同学年。18歳で死んだ山??博昭も回し読み仲間だった。当時を語る10数人の人々の膨大な言葉と証言、そして無数の写真が使われている中で、このガロ発言が妙に印象的なのは、自分にとっても身近な雑誌だったからだ。そうそう、観る前に翔べ、ということばも。“あの時代”への貴重な追悼録である。
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編集者、ライター
佐野亨
「10歳くらい年上の『団塊の世代』の大きな影を踏むように成長した」と語る代島監督。同じ1958年生まれで、昨年急逝した評論家の坪内祐三は、大文字の歴史のなかに埋もれがちな「ざわめき」を書き残すことにひたすら執着したが、代島もまた、歴史の転換点に命を落とした一人の少年、彼と交わったひとびとのことばから時代の「ざわめき」をすくい上げようとしている。ところでいま、同時代という歴史のざわめきをわたしたちの社会はどれだけ感知できているだろうか。
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詩人、映画監督
福間健二
山﨑博昭の死。評者は、半世紀以上、その衝撃へと何度も呼び返されてきた。佐々木幹郎の「死者の鞭」は大事な詩だ。代島監督の動機も納得したい。証言者の現在、知ってよかった部分もある。しかし、二〇〇分を使ってこれだけかと思った。まず、山﨑博昭を、家族、高校時代の交友グループ、中核派周辺の人間関係のなかに囲い込む感じで、その死が放った波紋の全域へと視野を広げていない。その後の出来事についても、同時進行する状況の動きの一端であることへの押さえが足りない。
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