デッドロック(1970)の映画専門家レビュー一覧

デッドロック(1970)

独自の世界を追い求めたドイツ映画界の孤狼ローラント・クリックによる1970年製作のクライム・アクション。100万ドルを巡る男たちの闘いを描く。音楽はジャーマン・ロックバンド、CAN。カンヌ国際映画祭特別上映作品。ドイツ映画賞長編作品賞受賞。出演は、「スペシャリスト」のマリオ・アドルフ、「007は殺しの番号」のアンソニー・ドーソン、「聖なるパン助に注意」のマルクヴァルト・ボーム、「あやつり糸の世界」のマーシャ・ラベン。
  • 非建築家、美術家、映画評論、ドラァグクイーン、アーティスト

    ヴィヴィアン佐藤

    よくぞこのような作品を見つけ配給し、公開に漕ぎ着けた配給会社と劇場に拍手を送りたい。世界中がコロナによる影響で新作映画が制作できていない現状だからこそ実現したのだろう。以前は映画館くらいしかエアコンが効いていなかった時代、適当に入った劇場でたまたま流れていた映画を見たような美しい思い出。これは偶然に出会ってしまった圧倒的に面白い作品だ。監督や役者などの名前というより劇中に蠢きスパークする熱量。このような作品を劇場で鑑賞できることはコロナに感謝。

  • フリーライター

    藤木TDC

    70年の作品でS・レオーネの影響はもちろん、「荒野のダッチワイフ」(67年)や「エル・トポ」(69年)にも似た抽象活劇で低予算映画マニアはタマランチ会長。だが同じ頃ドイツにはファスビンダー、ヴェンダースらが登場し商業主義的な本作の監督は21世紀まで忘れられた。ま、感性が近いヘルツォークのほうが圧倒的に派手で目立ったから埋没も仕方ない気も。本来は映画祭の役割だが、こうした魅力的作家は全作品一気に公開すべき。でないと海外盤DVDを買って見てしまいそう。

  • 映画評論家

    真魚八重子

    大金をめぐって男たちが醜い本性をあらわにしていき、命の奪い合いとなる映画の系譜だが、本作は微妙な緩慢さが個性的だ。各々が何かしら最後の決断を下すのをためらっているようで、その遅延が奇妙な時間を作り出す。大金の動きよりもむしろ、欲望の話から外れた、とある轢死に至るまでの停滞と躊躇がもっともドラマティック。女性が狂った娼婦と、知的障害のある若く美しい娘だけというのは、男性にとって好みの扱いやすい人形となるゆえで、この男性本位な設定に時代を感じた。

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